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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第19話・戦、始まりて…決戦編》-8

◆◇◆◇◆◇◆◇

「疾風!?どういう意味…」

パァンと空砲が鳴り響く。両隣りの選手が動き出すのを見て、楓も慌てて一歩を踏み出す。

───ズボッ!!

踏み出した足がのめり込んだ。

「なああああ!?」

そのまま身体も落ちてゆく。

『出たあああ!障害物競争名物落とし穴だあ!!スタート直後に仕掛けられていた為、見事に全員がボッシュート!!』
「くっ…こういう事かぁ〜」

選手達が落とし穴から這い出す。

『始めに落とし穴があるって言おうとしてたのに…』
「そう言うことは先に言えー!!」

姿の見えない疾風に向かって怒声を浴びせながら楓は走り出した。
現在、楓を含む3クラスが横一直線。

『次の平均台は左から2本目を渡って!』

楓はその声に従い、左から2本目の平均台を進んだ。

「うわああ!!」

左隣りの選手が転げ落ちる。

『折れたああ!平均台が中央で真っ二つだああ!!そして、アレは…』

何処かのクラスの控えテント。長身の女子が飛んだ。その下からはトスで上げられたバレーボール。
バシィン。

「ゴホァ!?」

右隣りの選手の脇腹に痛烈なスパイクが炸裂。

『決まったああ!ナイススパイク!ナイストス!ナイスコンビネーション!』

楓は何とか無事に平均台を通過した。

『次、レーンを右に移って』

楓の背後で「ああああああ…」という声がした。またも落とし穴。

「助かった!」
『次のネットは右から3番目』
「ぬぅわあ!ふ、服が…接着剤がああ…」
『跳び箱は一番左!』
「へぶっ!…ふ、踏切板が跳ねな……い」
『パンは左から3番目!』
「ひぃやああ!か、辛い!カラシが、カラシがあああ!」
「ちょっと待て!パンは流石に判らぬだろ!」
『今のは何となく!』

◆◇◆◇◆◇◆◇

数々の障害物を乗り越えて、ゴールはもう間も無く。

「楓、後少しだ!頑張って!」

後はもう最後の直線を残すのみである。

『疾風、勝てるぞ!』
「ああ、でも気を抜くなよ。後ろから追っかけてきている。それに最後の…」

疾風は反射的に首を逸らした。耳元を手裏剣が掠めてゆく。
驚いて、振り返ると霞が床に寝そべった状態で手を伸ばしている。

「ふ…ふふ…させないわよ…」

死力までも使い果たした霞はガックリと再び倒れ込んだ。

「しまった…」

イヤホンのコードが切られている。楓の声は聞こえない。

「くそ…霞め、最後の最後にやってくれた…」

毒づきながら、疾風は思考を巡らす。
今からグランドに向かっても間に合わない…
疾風は勢いよく窓を開いた。


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