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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第19話・戦、始まりて…決戦編》-7

「兄貴、昨日私の買っておいたお菓子勝手に食べたでしょ!!」
「知るか、そんなもん!」
「自分が腹が減ったからって、確認もせずに何でもかんでも食べるくせ直しなさいよ、この馬鹿兄貴!!」
「食われたくなかったら、名前書いとけ!
こっちも言わせてもらうけどなぁ!人の部屋に小型カメラを仕込むな!何だあの量は!?芸人ドッキリ企画だってあんなに使わねえぞ!!」
「うっさい!!あのカメラ使っても、私が本当に録りたいものは録れてないんだからね!!少しは根性見せんかい!!」

動きとは裏腹に口先ではすんごく不毛な争いが繰り広げられる…

「はぁ…はぁ…」
「くっ…っ…」

両者は教室の端に降りた。息は荒く、疲れは互いに隠し切れていない。

「ちょっと…はしゃぎすぎたな…」
「そ…そうね…」

気力を振り絞り、四肢に力を込める。互いに次で決めようということらしい。
霞の爪先が僅かに動いた。その瞬間、両者は飛んだ。
そして…

「くっ…うぅ…」

霞が蹲った。疾風は鳩尾から手刀を抜く。

「普通…妹の…鳩尾に…貫…手…入れる…兄貴なんている…?」
「顔じゃないだけ感謝しろ」

苦しそうに呻くと、霞はドサリと床に崩れ落ちた。
疾風は倒れ込みたいのを我慢して、小型無線の電源を入れた。

「楓…聞こえる?」
『馬鹿者───!!』

イヤホンからいきなり楓の怒声が襲った。
耳の中がキーンとする。

『無事なのか!?大丈夫なのか!?怪我は無いのか!?』

怒声はすぐに心配そうな口調に変わった。思わず苦笑いを浮かべる。

「ああ…何とか大丈夫。で、レースは?」
『今からだ』

そう言われ、疲れの残る身体を引きずりながら窓に向かった。
すぐ下ではネットや平均台の置かれたグランドとスタートラインに並ぶ選手達が見て取れた。その中に楓の姿もある。

「トラップがあるから気をつけて」
『判るのか?』
「素人の仕掛けた罠なんかすぐ判るよ」

そう言った時、イヤホンの奥で「位置に付いて、よーい」と言う声が聞こえた。

「とにかく、俺の声に従って!それと、障害物は目に見える物だけじゃないから!!」

───パァン!


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