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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第19話・戦、始まりて…決戦編》-5

「い、いたぁい…」
「余計な事は言わなくて良い!!」

そう言い返すが怒っている為、もしくは照れている為に楓の頬はほんのりと紅い。
まあ…多分、後者だと思いますけど。

「とにかく!次は私が出るのだぞ!何をしたら良いか判っておろうな?」

楓が物凄い形相で睨む。

「も、もちろんです!」

疾風は思わず踵を鳴らし、敬礼。

『大変長らくお待たせしました。障害物競争の準備が整いましたので、グランドに出てきて下さい』
「よし、じゃあ───」

放送が流れ、それを聞いたクラスメイトはグランドに向かおうとする。
コンコンコン…。
突然、床を何かが跳ねるような音がした。それはすぐにシューッという何かを吹き出す音に変わり、教室を白い靄が覆い出す。

「な、何だ!?」
「し、襲撃か!?曲者じゃあー!皆の者出会えー!出会えー!!」
「落ち着け!狙いは小鳥遊だ!小鳥遊の安全を最優先にしろ!!」

段々と濃さを増す靄の中で武慶が指示を下すと、女子が楓を囲むように避難してゆく。

───キィン。

澄んだ金属音が響いた。

「疾風!」

その音に楓は白煙の立ち上ぼる教室に向かって叫んだ。

「大丈夫!すぐに行くから!小型無線の電源入れといて!!刃梛枷、楓を頼んだ!」

どよめきの中からそんな声が聞こえてきた。
楓はもう一度名前を叫んだが、返事は返ってこなかった。
そして、静かになった教室。
靄は晴れ、視界がはっきりとしてくる。

「くっ…」

疾風は左右の腕を顔の前で交差している。それぞれの手には匕首と苦無が握られていた。
それと切迫しているのは四振りの忍者刀。

「ハッ!」

気合いとともに交差した腕を振りほどく。
疾風と襲撃者は互いに飛び退いた。

「霞の手の者か?」
「…不本意だが、如何にも」

疾風は静かに問い掛けた。忍装束の襲撃者は同じく静かに答えた。

「退いてはくれませんか?」

その重く渋い声から年長者と判断し、最低限の礼儀として敬語を使う。

「…それは無理な話だ。我々にも退けぬ訳がある」

余程重大な訳なのか、声の重量感が増す。


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