投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

刃に心
【コメディ 恋愛小説】

刃に心の最初へ 刃に心 158 刃に心 160 刃に心の最後へ

刃に心《第19話・戦、始まりて…決戦編》-3

『2−Eが一位通過!続いて、1−Aが…ああーっと、バトンが落ちてしまった!!』

刃梛枷の揺さぶりが効いたのか、バトンがカランといった乾いた音を立てる。1年A組のアンカーは急いでバトンを拾うと走り出した。

(ら、ラッキー♪今の内に少しでも差をつけて…)

だが、そこは1年エースと言うべきか、ジリジリと千代子との距離を詰めてゆく。
残りは200メートル、トラック一周分。

(くそ〜、速えんだよ!!)

そう思いながら、第一コーナーを回る。相手も後ろから上体を倒しながら回った。
直線でなら互角だが、コーナーを回る時に、やはり素人とでは差が生まれる。

(直線で離さねえと…)

脚を精一杯動かし、直線を駆け抜ける。
しかし、次の最終コーナーで、その差は僅か1、2メートル程しか無い。

(くそぅ…)

レースは最後の直線に入った。ゴールの白いテープまでが途方もなく長く感じる。

(このままじゃ…負けちまう…)

千代子はクラスの方を見た。
疾風が口に片手を当てて叫んでいる。口許が、『先輩、頑張れ』と動いたような気がした。

(疾風…)

負けられない。
クラスの為にも。
自分の為にも。
アイツの為にも。

(疾風が応援しててくれるんだ!今だけは、小鳥遊でも、黒鵺でもない!アタシだけを見ててくれるんだ!!だから…)
「負けて…たまるかあああああ!!!」

千代子は地を蹴った。
グランドからの反発力が足の裏に伝わる。
もう後ろは気にならない。後はただ、ゴールに向かって進むのみ!
少しずつテープが太くなってゆく。
そして、千代子の身体がテープに触れた。

『ゴォオオル!ゴォオオル!ゴォオオオオオル!!!2−E、やりましたあああ!!!』

千代子はゆっくりと速度を落とすと、クラスの方を見た。疾風が駆け寄ってくる。

「お疲れ様です。さすが先輩ですね!かっこよかったです!」
「あ、当たり前だよ!だって…疾風が見ててくれたから…」

顔に熱が込み上げる。

「疾風が応援してくれたから、アタシは勝てたんだよ…」

疾風の応援が無ければ、途中で諦めていたかもしれない。
千代子は恥ずかしそうに俯いた。

「そんな俺なんか役に立ってませんよ。勝てたのは先輩が頑張ったからです」

千代子の心臓がドキドキと跳ねる。先程の緊張とは違うドキドキ。

(何か…いい雰囲気かも♪これはもしかすると…チャンス?)

千代子は潤んだ瞳疾風を見つめた。上気した頬付き。
疾風はキョトンした表情を返した。


刃に心の最初へ 刃に心 158 刃に心 160 刃に心の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前