刃に心《第18話・戦、始まりて…激闘編》-9
「なっ!」
空間を三次元的に使い、瞬時に反転した疾風は宙に浮いたまま、左足を鞭のように朧に打ち込む。
朧は咄嗟に両腕でガードした。だが、衝撃を完全に殺すことはできなかった。
「ああッ!」
そのまま壁に打ち付けられ、ずり落ちるようにして床に蹲る。
「月路先輩…」
「…わ、私を倒しても…すぐに…第二…第三の月路朧が……」
「………貴女は何処の魔王ですか?」
「ふ、ふふ…♪また負けちゃいました…」
「先輩…失礼します」
疾風は白いハンカチを取り出した。
「…睡眠薬…ですか」
「判るんですか?」
「ええ…匂いで…薬物は《薬師》の本分ですから……♪」
そう言うと朧は目を閉じた。
「…手刀で黙らせればいいのに…疾風さんは本当にお優しい人ですね…♪」
「本当に優しければ、先輩を蹴ったりしませんよ」
「ふふ…確かに♪では、疾風さん…一思いにやって下さい…貴方にはまだ戦わねばならない相手がいるのですから…こうしている間にも…彼女は動いてますよ…」
疾風は無言でハンカチを朧の口と鼻に当てた。
フッと力の抜けた朧を支える。
『ゴォオオル!!スウェーデンリレー男子は1−Aが制したああ!!
先程の通常リレーの結果も合わせると、現在1位は1−A、3−Gは2位に、2−Eは3位に転落だああ!』
その瞬間にグランドから実況の声と大音量の歓声が響き渡った。
続く…