刃に心《第17話・戦、始まりて…準備編》-6
「アタシの方が頑張る!」
「いや、私です!」
「……私…」
ピリピリとした空気が疾風の肌を刺す。
理由は良く判らないが、疾風としては居心地が悪い。
「疾風、黒鵺。ちょっと来てくれ」
武慶が手招きしている。
助かったと言わんばかりに疾風は武慶の元に向かう。その半歩後を刃梛枷が付いていく。
「疾風…判ってるな?」
「ああ、此所じゃなんだから俺の部屋に…」
二人は声を潜めた。
「刃梛枷もちょっと付いてきて」
他の者達は雑談や菓子類やライバルとの争いに忙しい為、居間を出ていった3人に気付いた者はいなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
部屋に入った疾風は多少散らかっている漫画などを片付けると、ベッドの上に腰掛けた。
「その辺に適当に座って」
そう促すと武慶は勉強机の近くにあった椅子に、刃梛枷は疾風と少し距離を空けて、ベッドの上に腰掛けた。
「本当は、スウェーデンリレーのアンカーは俺じゃなくて、学校最速のお前がやった方がいいのにな」
「それは勘弁してよ…こっちは目立つのはご法度なんだからさ」
ははは、と笑い合う。
気を許した者同士の何気ない会話。
「まあ、その話はこれくらいにして…疾風、黒鵺。依頼を頼みたい」
スッと武慶の顔から笑みが消えた。疾風の眼鏡に隠された瞳も鋭くなる。
「二人には、裏でも働いてもらいたい」
続く…