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オレンジ色の教室
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オレンジ色の教室-1

僕は電車に乗って通学している。
ガタンゴトンガタンゴトン・・・
無機質に鳴る車輪の音。行き先は決めているけれど、どこに行くのかと不安になる。
電車の中のポスターが目に映る。
夕焼けをテーマにしたそれを見て、
ふと、懐かしい感覚に見舞われる。
そう、いつの事だったろう・・・


キーンコーンカーンコーン・・・
鐘の音が鳴る。途端に切なくなる、そんな気持ちを抑えて下校する。
夕焼けの中の教室はとても寂しげ。けれども嫌いでは無かった。その意味を考えて一日を無駄にした時もあったけど、答えは見つからなかったし。
誰も居なくなった教室。ただただオレンジに染まる世界を満喫していたら、となりに彼女が居た。


僕の名前は七未 結城(ななみ ゆうき)
僕の家庭は普通だ。もし、家庭という見本を見せるのなら家を進めてもいいくらい。そのくらい普通だった。
中学二年生になったばかりの僕は学校にも慣れたし、両親の仲も悪くない。
僕も、普通に毎日を楽しんでいたけれど、どこか、最近は何をやってもやる気になれず、つまらなかった。
まるで灰色の日々。
そんな風に一人、ホームルームが終わっても教室に座って誰も居なくなるまでずっとオレンジ色の夕焼けに染まる世界を眺めていた。

「ねえ、隣良いかな?」

答えなんか聞かないで僕の席の隣に座る彼女。けど・・・

「あ、えっと、うん。いいよ」

どもりながら答える僕よりかはマシかな。
ショートカットでどこか自由人な感じがする彼女はおくれた返事に満足そうに頷くと笑顔で答えた。

「うん、サンキュ」

綺麗な笑み。
これが、彼女、遠山美空(とおやま みそら)との出会いだった。
あの後、つたない会話が少しだけ続いて知った名前。
彼女、遠山美空さんは会話上手で、あまり話すのが上手くない僕でもそれなりにおしゃべりが続いた。
となりのクラスで、弓道が好きでとても上手いとか、かっこいいお姉さんがいるとか、色々教えてくれた。僕のほうはほとんど何も言えなくて聞いてるだけだったけれど。
そんなやり取りが数日続いて・・・それが続くたびに、僕も彼女との会話が楽しみになっていた。
そんな時、彼女はこんなこと言った。

「ねえ、あたしが居たっていうのを残すなら何をすれば良いかな?」
「え?」

言われた事がどうにも妙で、つい返答に困る。

「あたしさ、もうすぐ死んじゃうんだ。だから」
「・・・へ?」
「なんかさ、くろーい変な影みたいな人にいわれたのよねー。まいったまいった。
 だからさ、あたしが居た。っていう事をのこしたくてさ」

アハハー、といつもみたいに笑う彼女。
からかわれているのだろうか・・・なんて思ったけれど・・・

「そんなことしなくても・・・僕が美空さんを覚えてるよ」

妙なことを言ってしまって、とてつもなく恥ずかしかったけれど、不思議と後悔みたいなものは無かった。
彼女は、目を丸くして驚いきながら顔を少し赤らめて、最初と同じような笑顔で答えた。


「うん、サンキュ」


綺麗な笑みだった。


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