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オレンジ色の教室
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オレンジ色の教室-2

次の日の朝、気分良く学校に向かった。あの後、ふたりとも妙に互いを意識して話もできず、そのまま下校した。
今日は緊急朝礼があるらしく、校長先生の話が始まった。

「柳美空(やなぎ みそら)さんが、昨日、お亡くなりになりました」

美空・・・という名前に聞き覚えがあった僕は突如不安に襲われる。

不安は、的中した。

その後、先生や友達、彼女の家族に聞いてわかったことは、彼女の本当の名前は柳で彼女の母の旧姓が遠山だったらしい。前から体が弱く、昨晩、高熱を出して無くなった事。
変な影と言っていた彼女の言葉を思い出したけれど、そんな話は微塵も上がらず、聞いてもいまさらどうしようもない気がした。


今日は、彼女は来なかった。


オレンジの世界はもう暗くなってしまった。
ふと、僕は目から涙が溢れる。
恋人という訳ではなかった。
長い付き合いでもなかったけれど、ただ、



涙が止まらなかった。



ガタンゴトンガタンゴトン・・・
目を覚ますと、電車は降りる駅を通り過ぎ、結構遠くまで来ていた。夢を見ていたようだ。
時計を確認すると情けないことに数時間は立っていた。
無性に、夢が気になり、学校に行く気は無かった。
なぜなら、この時間なら、間に合うかもしれないと思ったからだ。
電車を乗り換えた。


久々の教室は、少しだけ古ぼけていた。
入るのに少し苦労したけれど、なんとか間に合った。
オレンジの世界はあの頃のままだった。僕はふたりの特等席に向かう。
そして、懐かしい席に腰掛けて、彼女がいた場所に向けて呟く。


「ちゃんと、覚えてる。忘れないから」


昔からどうも苦笑ばかりだったせいか笑うのは苦手だったけれど、今は、人生で一番の笑みが作れた気がした。
開けっ放しだったのか、奥の窓から気持ちの良い風が届く。
彼女が「サンキュ」、と言ってくれた気がした。
そういえば、彼女に一度も言った事が無いことを思い出す。
ここなら、きっと、遅くないはず。


「どういたしまして、それと、ありがとう」


すべてが灰色に見えたあの時、短い間に大切な輝きをくれた彼女と、オレンジ色の世界に別れを告げる。
なんて事の無い話。
けれど、僕には大事な何かをくれたこの時。
いずれ記憶が薄れて輝きは小さくなるけれど、決して消えはしない。


オレンジ色の世界で見つけた淡い思い出を・・・


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