有無-3
「お父さんもお母さんも弟も、友達も、部活のみんなも……
みんな、本当は…死んでいるとしたら?」
──実は日本は……ううん、世界は滅びていて、だけどシュンだけが生き残ってる。それに気付かないあなたが見ているのは、全て死人だとしたら?本当は、その辺には死体が転がっていて、それに話しかけているのだとしたら?
「ちょっ…ハル。何、言って…」
ふと、通りすがりのカップルの……女と目が合った。
何か言いたそうに、こちらをじっと見つめてくる。
変な汗が湧き出てきた。
それに拍車をかけるかのような、ハルの言葉。
「もしみんなが死んでるなら、シュン…孤立しちゃうね?
たった1人だよ…?」
「やめろっ!!
なんなんだよ…お前は、死んでるのか!?」
おかしいのは、俺か。
ハルか。
それとも……
この世の中全てなのか。
すると…やわらかく、ハルが笑った。
「大丈夫。私は、死んでないよ?」
安心して、思わず脱力した。
「死んでるのは、シュンの方」
安心したのも束の間。
ハルの言葉で、再び…時が止まった。
「え?」
「まだ、思い出せないの…シュン?
君は、もう…生きてないんだよ」
笑っていた彼女が……急に泣きだした。
「シュン、死んじゃったのに……ずっと会いに来るから。おかしいと思ってたけど…嬉しくて。
なかなか本当のこと…言えなくて……」
頭が割れそうに痛い。
記憶が、ゆっくりと戻ってくる。
そういえば、俺…最近ハルとしか話してない。
みんな、悪戯か遊びで…俺のこと無視してるんだと思ってた。