有無-2
「忘れてるって、なんだよ」
「だから…シュンの彼女は、死んだ。だけど、それを受け入れられなくて…記憶から消した。
それで、何事もなかったかのように、私に会いにくるの。死んでるはずの私と…毎日を過ごす」
真顔でさらりと言うハルに、寒気を覚えた。
突き刺さるような視線を向けられ、少したじろぐ。
まるで、ハルの皮を被った…別の生き物みたいだ。
「なぁ、どうしたんだよ…」
「別に、いつもの思い付きだよ。
ねぇ、答えて…?」
「そ…んなこと……」
あるわけがない…そう、言いたかった。
だけど…本当にそうだろうか。
心の片隅で…何かが俺を引き止めた。
保証なんて、どこにもない。
それに…今日のハルは、いつもと様子が違う気がするのだ。
………。
いや……でも、待て。
もし俺に霊感があって、幽霊が見えるのだとしても…
「やっぱり変だ。
俺に霊が見えるなら、ハルが見える前に他の幽霊が見えてるはずだろ?」
生憎俺は、生まれてこの方…幽霊どころか、金縛りにさえあったことがない。
「もういいだろ?この話は、終わりっ!!」
無駄に大きく言って、その話を終わらせようとした。
「でも、シュン」
ハルは、表情ひとつ変えない。
「シュンが見ている人、全員…幽霊だとしたら?」
「……えっ…」
急に、冷水を浴びせられたようだった。