たったひとこと【第5話:恋のライバル・サバイバル】-9
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「な・・・!!」
教卓の前でニコニコしている女の子。対照的に担任は今にも倒れそうだ。
黒板に転校生と書かれた隣の漢字5文字が事実を肯定している。
「一身上のツゴ―により転校してきました、藤堂流々花です♪」
「どっ、どういうことだよ!」
勢いよく席を立つ成之。
「ちゃんと親父と話してみたんだ。そしたら親父も分かってくれて好きな人のいる学校に転校手続きをしてくれた♪」
「好きな人って・・・」
「オレのことか―!!これからは流々花ちゃん一筋で・・・ぶべしっ!」
ルパンポーズで飛びかかった一平を片手で軽くなぎはらう転校生。
「もちろんお前だ、成之♪」
そう言って成之の首に抱きつく。
「まだ諦めた訳ではないぞ!末永くよろしくなっ♪」
その日、成之がクラス中の男子の制裁を受けたことは言うまでもない・・・
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舞台は変わって再び薄暗い和室。しかし向かいあっているのは手下の男達ではなく
「ホントにアレで良かったのかあ、親父?」
長髪を掻き分けて尋ねる鳴海。
「アイツの目、友花にそっくりだった。あの目を見とると天国の母さんに怒られとるような気がしてな」
「親父達、かけおちだったんだろ?聞きたいなぁ♪そん時の話」
ぷいと横を向く親父。
この仕草は照れてる時か重要な命令を下す時にしか見せない。今は前者のようだ。
「顔も友花に似て美人になりおって・・・」
「ノロケなら帰るぜ。オフの途中なんだ」
「鳴海」
足を止める。
「お前はまだわしがあの女との仲を引き裂いたのを・・・」
「・・・終わったことだよ、おやすみ」
襖を閉め、丸窓越しに夜空を見る。
今夜は満月だな・・・
・・・第6話に続く