たったひとこと【第5話:恋のライバル・サバイバル】-8
「あなたが誰かなんて関係ない!ムカつくから殴るの!」
何故かこの時、六呂と初めて会った時の、あの言葉が浮かんだ。
「自分にとって大切な人が傷付けられた時、お前、じっとしてられるか?」
成之が密室でアタシを守ったのは偶然かもしれない。だけどアタシは!
「成之を傷つけるんならアタシも敵よ!」
やっぱりアタシは成之が大切だ
「・・・」
「・・・」
「・・・帰るぞ」
「ええっ!?」
ざわつく男達。
そりゃそうだろう。組の幹部候補が女の子の平手打ち一発で撤退を命じたのだから。
「流々花も帰るぞ」
煙草を取り出す。
「それ、私の学校で吸ったら殺すわよ」
風紀★委員の紋章が光る。
「今は学校を守るヒ―ロ―か?カッコいいね♪」
先程までの真剣な顔を崩して遊び人に戻っている鳴海。
「よっしゃ、歯ァ食いしばれ」
「冗談だって。でも久しぶりに麻里音に殴られたいなぁ♪他の女といてもつまんないんだよ♪ヨリ戻そうぜ」
「しょうもないこと言ってるとホントに殴るよ。さっきも詩乃が1秒遅かったら鼻折ってたのに」
「おーこわ」
取り出した1本を箱にしまう。
「恋人を制裁なんて嘘でしょ。手下が全く動けてなかったわよ」
「兄貴として妹の男の器量を見たかったんだよ。兄弟愛♪」
「で、判定は?」
詩乃に膝枕されている成之を見て
「様子見・・・かな。いい男には威勢のいい女がつく。にしても、痛かった」
頬をさすって笑う。
その喋っている2人を見ていた男達の1人が
「おっ、おいあれ!元関東レディース総番の楮山麻里音さんじゃねえか!?」
「マジ!?本物かよ!」
マリ姉の周りにわらわら集まる男たち。
「エェ―――!!?」
驚愕の一同。
「そ、そうなのマリ姉!?」
「1年間だけ代わってやっただけだろ。ったく」
「でも全国制覇の寸前までいったのは伝説っすよ!」
「サインくださ―い!」
やっぱマリ姉って・・・凄い!
「成之」
流々花がおずおずと話しかける。
「色々ありがと、あと・・・ゴメン」
「オレが勝手にやったことだろ?気にすんなよ」
ぽんと肩を叩く成之。
「オレ、ちゃんと話してみる。頑張ってみる!みるからその・・・また、会えるかな?」
もちろん、笑顔で答える。
「会えるって!きっと!」
「うん、きっと・・・」