たったひとこと【第5話:恋のライバル・サバイバル】-7
「だっ、誰が漫才師や・・・」
「そうだ」
「へっ?」
すっとんきょうな声をだす一平。
ま、前から息が合うとは思ってたけど、まさか付き合ったんか!マリ姉とオレは!
「と、言ったらどうする、鳴海?」
ズコッ
コケる一平。
「う―ん、とりあえずジェラシ―で消すかな、その子♪」
「な、何やとお、やれるもんなら」
パチッと指を鳴らす鳴海。
塀の向こうに隠れていた何十人ものその道の男達が現れる。
「何で隠れてたんだ?俺達?」
「鳴海さん、カッコつけんの好きなんだよ」
こそこそ話す男達・・・
「マジでやるよ、コイツは。アタシが駅前でティッシュ貰っただけで、そのバイト全治3ヶ月にしたから」
「さ、さんか」
ふにゃっ
腰を抜かす一平。
「兄貴!その人たちは関係ない!」
「よう♪流々花。元気してたか」
呑気に返す鳴海。
「心配しなくても俺はお前の回収しか親父に言われてねえよ♪ただし」
ピンと指を立てる。
「お前の恋人と名乗る男にはそれなりの制裁を与えるよう追加注文があった」
「こ、恋人じゃない!オレが勝手に」
「オレだよ」
すっと鳴海の前に出る成之。
「成之!?」
「流々花の親父に伝えろ。テメェらの世界のルール流々花に押し付けんなって」
横っ飛びする成之。脇腹に走る衝撃。
「成之!!」
詩乃が慌てて駆け寄る。骨は折れていないようだが、それでも相当なダメージを負っている。
まるで別人のように豹変している鳴海はこっちが本物というべきなのかもしれない。
「オメェにゃ遠すぎる世界なんだよ、坊主」
「・・・流々花が誰か好きになって悪いのかよ!」
立ち上がって鳴海の胸ぐらを掴む。
が、また生々しい音と共に地面に沈む。
「ぐっ」
「お前、藤堂組組長の息子に手を出すってのがどういうことか分かってんのか?一時の感情で死にたかねえだろ。それに」
パシン
校庭に響く小さな乾いた音。
詩乃が真っ直ぐに睨みつけている。