たったひとこと【第5話:恋のライバル・サバイバル】-4
「しっ詩乃っ、落ち着け!」
「アタシなんかっ・・・アタシなんか小学校低学年の時から成之と手なんて繋いでないのに、それをあんの小娘―――!!!」
電光石火の早さで屋上を飛び出す詩乃。
マリ姉が遅れて追いかける。
取り残された2人。
「私たちも行く?」
「・・・たまには静かに飯を食いたい」
その言葉を聞いたくるめが嬉しそうに微笑む。
「そだね、久しぶりに2人きりだし・・・そうだ、ろくちゃんにお弁当作ってきたんだ♪味見して♪」
汚れないように地面に真っ白なハンカチを2枚敷いた。
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「ったく、あのバカ若が・・・あっ、繋がりました!!若、聞こえます?」
「よ―く聞こえますよ、バカ若までしっかり」
「いや、それは、そのっ」
「もういいよ、メンドイから。用件だけ話せ」
「はい・・・実は」
「流々花回収?そんなん下のヤツにやらせろよ。オレ今オフだし」
「家族の問題だからと組長が」
「親父が流々花に嫌われてるだけじゃん。オレ達仲いいし」
「お願いしますよぉ。若が来てくれないと俺達が殺されちゃいますよぉ」
「泣くなよ・・・分かった。行けばいんだろ。場所ドコ?高校?ドコの?おまっ、バカそれ先言え!月島高校ならすぐ行くよ♪」
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高校生で運動部でもないのに全力疾走する時ってどんな気持ちでしょう?
「手ェ離せよ、お前がいるから追いかけられてんだっつの!」
「愛し合う2人の手は何人たりとも引き裂けないぞ♪」
「愛してねぇ―――!離せ―――!」
しかし、体力も限界だ。
手が触れそうな所まで迫り来る一平たち。
「よっしゃ―――、後1歩や、行くで・・・ぶえっ!?」
予想外のインパクトに地に臥す一平。
倒れた一平を皮切りに将棋倒しになる暴徒たち。
「た、隊長―!」
「お前ら、重いねん!・・・それよりも何すんねん!」
グーの痕のついた顔で見下ろしているマリ姉を睨む。
が、マリ姉の眼光の方が遥かに勝っている。
「ああん?」
ヘビに睨まれた蛙はすでに隊長の威厳を失っている。
「アンタたち!風紀委員の私の前で校庭の土を荒らすとはいい度胸だ。明日からも登校したかったら、すぐに校舎に消えな!」
マリ姉のグーポーズに一同悲鳴を上げて巣に帰ってゆく。
「た、助かったぜ、まりね・・・」
「な〜り〜ゆ〜き〜?」
おどろおどろしいト―ンを使わなければ表現出来ないであろうオ―ラを携えて歩み寄る詩乃。
腕組みをしているその姿は大魔人を思わせる。