たったひとこと【第5話:恋のライバル・サバイバル】-2
「面白いクラスメイト達だな♪」
足をプラプラさせ、まるで他人事のように喋る陽気なガール。
だが成之はこの時はまだ、自分が標的になるとは夢にも思っていなかった。
「ねえっ、君、カワイイね♪どこの学校?彼氏とかいるの?」
「よかったら放課後遊ばない?もちオレのおごり♪」
「名前何ていうの、ねえねえ?」
彼女を中心にでき始めた獣達の輪。それを一蹴する一言が放たれる。
いや、獣共に餌を与える一言が・・・
「だーめ。だってオレの恋人はコイツだから♪」
そう言ってまたぎゅうっと腕に抱きつく。
とてつもなく嫌な予感・・・
「成之っ!?、テメェ」
「そうか、お前成之っていうのか。オレは流々花(るるか)末永くよろしくな、成之♪」
こんな状況で呑気に自己紹介を済ませる流々花。
教卓から降りて成之の方に向き直り
ちゅっ
つま先立ちでほっぺにキス。
「おまっ!何して・・・」
「挨拶だっ♪」
男の子なら一度は憧れるシチュエーションを、平日の朝にやってのけた成之に逃げ場があろうはずがない。
集中する非難の、もとい殺意の視線。
殺られる・・・!
ガラガラっ
「おっはよ―。HR始めるぞ―席に着け―」
ほっ、助かった・・・
みんな渋々席に戻る。
授業が始まってしまえばこっちのもんだ。あの娘だって帰るだろうし・・・ほっ
再び安堵の息をつく。
「・・・沖。俺は10年ここで先生してきた。犬を教室に入れたり、鳥を飼ってた奴もいたよ?」
「?はあ」
「だが堂々と女の子を隣に置いているのは初めてだ!」
首を90度回してみる。
さっきと同じ、いや、さっきよりくっついてる距離で成之の横に座っている。
向こうの隣の席の生徒が空気イスで耐えている。
・・・可哀想に
「君!他校の生徒は出て行きなさい!さもなくば警察か親を呼んで・・・」
「・・・んだ」
「え?」
目をこすりながらしゃくりあげる流々花。
「・・・オレ、小さい時に親が事故で死んじまって、勉強したくてもお金がなくて・・・だから、だから・・・うう」
ついには成之の机に泣き崩れる。