空事乙女-2
-あぁ。
と今日初めてお京の口から極めて小さいく女らしい悲鳴が漏れた。
驚きの声か羞恥からか定かでないが、それを聴いた男の乳房に回した手により一層の熱が込もる。
柘榴の粒のように赤い先端を幾度も摘み、そこからじわりと朱が広がっていく頃には、お京の吐息とより荒い男のそれが合わさって湿度を生んでいた。
「旦那。」
お京は牽制してから少し乱れた髪を掻き上げる。
「旦那、零れちまうよ。」
膳を押し退けて前方にまわると、屈み込んで手から唇を通し摩羅を滑らかに口腔まで貫かせた。
数回唇でしごいてから一度奥まで飲み込んだ後緩慢に舌を左右に動かしつつ引き抜いて行く。
手淫により高められた感覚は既に絶頂を目前にしていた。
咥内の男自身が太さを増したことで、お京は時期を計って男の目を見上げ、射精を促す。
男は両手でお京の頭を押さえ、咥内に粘液を吐き出した。
「随分とため込んでらしたなぁ。」
お京は顔をしかめもせずにひとしきり舌の上で転がしてから、杯を取り上げて酒とともに燕下した。
「今度はお床でするかい?」
お京の問いに息の上がった男は頷いたが、 -少し休もう-と付け加えた。
「お京姐さん、伊藤様のお座敷もうようもたんわ。」
禿のいよりがどこか嬉しそうに呼びかけると、お京は口を尖らせて答えた。
「今行くとこだよ。」
露払いとばかりに渡り廊下を先へ進みながらいよりは益々楽しんでいる。
「したら姐さん、呉服屋の旦那さんはどうするん。」
「お前はほんに煩い禿だね。ちゃんと手水言うて抜けて来てん。あの旦那は一回いっちまったら四半刻は出来ないよ。したらちょうど花一本じゃ。」
「あんだけ待たせてそれはかわいそ違うん?待つ旦那も旦那やけど。姐さんの嘘は天下一品やからな。」
「何言うてけつかるん。あっちら女から嘘取ったらな…」
立ち止まりったいよりが見返り尋ねる。
「嘘取ったらどうなるん。」
ー穴しか残らん。ー
口の中で呟いた後、お京は唇を結んだまま座敷の襖を開けた。