淋しい嘘
〜私は誰も愛さない〜-5
星編
あ、よー君だ。
あたしは高校時代から毎日ずっと感じのよい好青年を見ている。
何と言うか、好きな人。片思いの人。えーえんにアイシテルよーん、なーんて言ってみたりした。…お空に向かってね。は、あっははー。泣けてきてしまうわ。
今日は会社の2階東課で、流れ星の里というカラオケ店に来ていマース。2東はたのしーとこだ、よー君がいるからねっ。あたしよりちょい上でなんというか、優しいのだ。でも、カラオケつまんなーい。よー君がいないから。
そしてあたしはこの日、羽目を外しまくる。酒に飲まれ、泣きまくり、大声で片思いの人の名前を泣き叫んでいた。 まぁ〜〜〜ったく記憶がないのだが。
佐東に星の情報が行き届いたのは早く、日付が変わらないうちに知った。知ったものの、どうすることもできない。僕には、愛ちゃんがいるし、別に本人の口から聞いたわけでもないしさ。
同時期に、愛は佐東とは全く別のことで迷っていた。佐東に本当のことを伝えようか、永遠に伝えないか、
伝えたいのに…
先ほど愛に話しかけられた言葉は、
「三郷お嬢様、これからお見合いに参りましょう」である。
「嫌よ。嫌よ、ばあや。わたしには洋さんがいるんだから。いや」
それから30分後、三郷は車に乗り許婚のもとを訪れる。
「お初にお目にかかります。郡山三郷と申します。よろしくお願い致します」
また、三郷の演技が始まる。
もう隠し事をしたくないと思った三郷は洋に全てを話した。洋は今までずっと隠し事をされていたことに対して、大変なショックを受けた。
そしてその後、人生でたった一回、洋一人では償いきれいほどの大きな間違いを犯した。
星は混沌とする意識の中で、夢を見ていた…
もっと正確に言うと、夢にしたかった思い出がフラッシュバックしていた。
「星ちゃん、ごめん。君とは付き合えない。僕には大好きな人がいる。誰よりも大切な人がいる。
その人との何よりも輝いていた過去の思い出があり、大事な未来がある。
悪いんだけれど、君ではない。
本当に済まないと思っている…」
「あはは、もういいの、もういいの。私、あなたに誰よりも大事な人がいるってことを知っていたわ。それでも、諦め切れなくて、気持ちを引きずっていたのよ。ただ、最初から好きだったってだけ。もう過去の恋だと知って、あなたを忘れるためだけにあなたに一晩抱かれたのよ。もういい、だから私のことなんてもう 忘れて、早く…早くその人のところに行って」
男は、一晩寝ただけの女をホテルに残したまま、独り足早に駆けて行った。女は一人取り残された。
「もういい、もういいよ、ようちゃん。さよならだね、ようちゃん。あたしたち、あかのたにんにもどっちゃったね、ようちゃん。でもね、さっきのことばは、ほとんど・・・ぜんぶうそなんだよ、ほんとはね、いまでもまだすき、だいすき、まだ・・・」
だいぶ時間が流れた後に、女はタクシーに乗り、一人泣きながら帰っていった。
その後、彼女はどんどん堕落していった。満たされない強い思いを抱きつつ。そして落ちれば落ちるほどに一途過ぎた彼女の欲求は強くなるばかり。
彼女は妊娠し、その子が誰の子かわからなかった。
彼女は「ああ、ようちゃんの子だぁ」なんて思っていた。名前を付けるときは一瞬躊躇したが、結局かいらと名付けた。