きみのて-1
子供の頃から、手先が器用だった。
そのためか、いつも冷えていた。
夏は心地よいけど、
冬が来るのは鬱だった。
「亮君の手は、冷たいね。」
俺の隣に座って、
テレビを観ていた君は言った。
「お前の手は温かいな。」
小さくて柔らかいし、と付け加えた。
「幼児体温って言いたいの?」
「いんや、可愛い。」
触れてきたその手を握り返しながら言うと、
君は笑って肩にもたれてきた。
「手の冷たい人は、心が温かいって良く言うじゃない?」
そうなの?、と思いつつ
「じゃあ、お前は心が冷たいの?」
笑いながら訊いてみた。
「そうかもね。」
「そうなの?!」
ちょっと思った答えと違かった。
「冷たいのかも。」
「へぇ…。」
「否定はしてくれないの?」
茶色がかった目が、
いたずらそうに俺を覗き込む。
「だって、そんなの噂だろ?」
温かいと言って欲しいのだろうか?
「まあね。」
「引き下がるのか。」
「ううん、そうじゃないの。」
そう言うと、君は俺の手に自分の手を重ねた。
「亮君の手を温められるなら、私は心が冷たくても良いかなって。」
そう言って、君は微笑んだ。
綺麗で、温かい笑みだった。
●End●