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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第15話・奉り祭り》-5

「おぉ!ユウすげぇ!」
「ユウじゃない。レ○ドと呼べ」
「T○M!?」

十三では無かった。

「「祝」」
「すな!」

そんなやり取りを横目で見ながら、刃梛枷が店主に小銭を渡した。

「黒鵺やるのか?」

武慶が問い掛ける。
刃梛枷は静かに頷いた。
ゆっくりとレバーを引き、弾を込める。
両腕でしっかりと銃身を持つと狙いを定める。
そして、銃口を小さなキーホルダーに向けた。
ぱんっ。
軽い銃声が一つ。
コルクの弾丸はキーホルダーの右上を撃ち抜き、そして跳ねたその先の玩具も落とす。

「おぉ!ゴ○ゴだ!本物の13がいる!」

彼方のはしゃぎ声を無視するかのようにゆっくりとまた弾を込めた。
そして、引き金を引く。
初弾で一つ、跳弾でもう一つ。

「すごいな!」

疾風が言う。
その声にレバーを引く手が少しだけ止まったが、何ごともなかったかのように動いた。
ぱんっ。
今度は景品に当たらなかった。
コルクは跳ねて景品を支える台の支柱に当たる。

「ちょっと緊張しちゃったのかな…」

希早紀が呟く。
だが、刃梛枷は気にすることなく次の弾を込め、放った。
また、外れる。
コルクは支柱を穿つ。ギシリ…と音が鳴った。
そして、最後の一発を込めると銃口を支柱に向けた。

「お、おい…」

厳つい面持ちの店主が顔に似合わず慌てた声を上げた。
だが、その声も虚しく弾丸は支柱を撃ち抜いた。
ガラガラと音を立てて景品が雪崩れ落ちる。

「……ネジが緩んでいたから…」

周りは声を失った。

「…嬢ちゃん…頼むから全部は…」

店主が恐る恐る声を発する。

「……判ってる…」

刃梛枷はそう言うと崩れた景品の中の一つを指差した。

「……アレだけでいい…」

それは最初に撃ち落としたキーホルダーと同形の物だった。


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