たったひとこと【第4話お泊まりミッドナイト】-8
「首、痛いんならこれ敷いとけよ」
さっきからしきりに首を傾けている詩乃にハンカチを渡す。
「・・・ありがと」
「そういえばさっきぬいぐるみだらけの部屋があったけど」
詩乃の脳裏に成之くん人形が浮かぶ。
「え!?いや、あの、それは、その」
「どっかで見たと思ったけど的場だったんだな、アレ」
「え・・・そう、そうよ!それだけ彼のことを愛してるのよ!」
「そうかあ?」
「そうよ!」
詩乃の剣幕に少したじろぐ。
「そんなムキにならなくてもいいだろ・・・イヤ!やっぱ接点がなさすぎる」
「う―ん、あっ、確かあの2人も幼なじみよ?」
「マジ!?想像出来ん・・・」
「くるめが言ってたわよ。昔は一緒に帰ってたんだって」
そこで一拍おいて
「・・・アタシ達も子供の頃、よく一緒に帰ったわね」
「・・・まあな」
2人の脳裏に手を繋いで帰り道を歩くあの頃の2人がよぎる。
「お泊まりするのも小学生の時以来よね」
思い出しているように宙を見つめる詩乃。
「ホントによくお泊まりしてたよね。成之の家の時もあればアタシの家の時もあって。1日中遊んでたのに、その後することあったのかな」
成之がニヤリと笑う。
「覚えてる。詩乃に無理矢理オママゴトさせられたんだよ。2人しかいないオママゴトなんてつまんないのに、詩乃、めちゃくちゃ楽しそうだったぜ」
ムッとして反論する詩乃。
「そのかわり次の時はヒ―ロ―ごっこに付き合ってあげたもん。アタシが人質で成之が、ほら、あのアニメの」
「ウルトライダ―!」
「そう!で、怪獣の人形を倒してアタシに言うの。私が来たからにはもう大丈夫!って」
「よく覚えてんな、そんな昔の、くくっ」
「成之だって、オママゴトのこと、今でも、ふふふっ」
「ぷっはははは」
「あははははは」
2人共、顔を見合わせて笑った。
そうやって笑ったのは数年ぶりだった。