たったひとこと【第4話お泊まりミッドナイト】-7
「アレ?」
「どうしたの?」
「閉まってる・・・」
2人の頭の中に同じ言葉が浮かぶ。
オ―トロック
「・・・マジかよ。お―い!お―い!!誰か―!!!」
返事はない。おそらく厚い壁が防音効果を生んでいるのだろう。物置か何かで、外からの音も完全に遮断されている。
「駄目か・・・」
「てことはアタシ達・・・密室に2人っきりってこと」
「・・・変なこと言うなよ」
だが、改めて状況を確認すると体が火照ってくる。
2人にとって1番好きな人がこんなに近くにいるのだから。
鳥も寝静まった真夜中。
ひんやりとした床の上で2人の体温は急上昇。顔が痛い位熱い。
どくんっ、どくんっ
心臓が体の中で跳ねている。
2人の密接した体は、それをお互いに感じている。
「こっ、こんな時だからって手出さないでよねっ」
「なっ、何でオレが!お前こそ怖くなっていきなり抱きついたりするなよ」
「するワケないじゃない!」
お互い無言のまま時間が過ぎる。
「・・・」
「・・・」
《詩乃’sマインド》
(何で手を出さないのよ―!こんなラッキーな状況滅多にないわよ!据え膳食わぬは男の恥よ―!!)
《成之’sマインド》
(あれ、抱きついて来ない?閉じ込められたんだから絶対怖いだろぉ!?・・・というよりオレの理性がもう限界です。詩乃の洗い立てのシャンプ―の匂いとか反則だって!)
お風呂の時にうっすら見えた詩乃の体が今、手の届く距離にある。はだけたパジャマが眩しい。
プチン
(駄目だっ、詩乃っ、我慢できない、許せっ!)
「・・・そういえば」
「ごめんなさ―い!オレが全て悪かった!つい出来心で」
「?くるめって六呂くんのこと、どう思ってるのかなって」
「え?あ、ああ」
ほっと胸を撫で下ろす成之。
「どうって何が?」
「鈍感ね―。好きなのかってことに決まってるじゃない」
目の前の男の気持ちに気付いていないのをいいことに言う。
「それはないだろ。住んでる世界が違い過ぎ。おまけに身長も」
「でもお互い好きならそういうのって関係ないと思う」
「甘いな。やっぱギャップがありすぎて続かなくなるって」
「そういうのを乗り越えて幸せになる人達だってたくさんいるんだから」
自分達を棚に上げて他人の恋話にはとやかく恋愛論をぶつける2人。
このエネルギーが少しでも自分達に向けばスグにでもラブラブなれるものを・・・