たったひとこと【第4話お泊まりミッドナイト】-6
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「・・・ちょっと、トイレ」
熟睡しているマリ姉を跨いで部屋を出る詩乃。
トイレを探すにも、まるで迷路のような通路とドアの多さは詩乃をトイレに行かせるのを拒んでいるようだ。
「どっちだったっけ?」
思いつくままに進んでは、ドアを開けてみる。だが中が暗すぎて分からない。
「ここかな?」
入って手探りでスイッチを探していると
ぐらっ
触った何かが積んでいた物のバランスを崩し
「きゃあ!」
落ちてきた物に詩乃の足が挟まって動けない。
そんな・・・成之、助けて!
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夢を、見ていた。
ずっと昔の忘れていた、夢を。
あの日、オレは詩乃を・・・
その時、部屋を出ていく音。
こんな時間に誰だ?
何故か不安になり、そっとドアを開ける。
見えない廊下の先から確かに聞こえる足音。
マリ姉か?潤原か?
ふと開きっぱなしになっている部屋に目を向ける。
月光に照らされているのは、何体ものぬいぐるみ。
何でぬいぐるみが?
その1つを手に取ってみる。
・・・誰かに似てんな
まさかモデルが自分だとは知る由もない。
突如、聞こえる小さい悲鳴。
「詩乃!?」
声のした方へ走ってゆく。すると暗闇の中で倒れている人影。
慌てて近づいた為、段差につまずき、その体の上に倒れこむ。
カチャリ
そして乾いた錠の音。
「し、詩乃」
「・・・ちょっと離れてよ。えっち」
「な!?動いたら物が崩れるからしょうがないだろ」
「どうだか。どうせ隙あらば、なんて考えてんでしょ」
「何だと―」
本当はずっとこうしていたいとさえ思っているのだが、長年の憎まれ口はなかなか治らない。
「・・・とにかくドアを開けてよ」
「おっ、おう」
崩れた物が微妙なバランスで立っている為、体を起こさず手だけで慎重にノブを回す。