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たったひとこと
【コメディ 恋愛小説】

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たったひとこと【第4話お泊まりミッドナイト】-11

○○○○○○○○○○○○

るんるん気分で家に戻る詩乃。

早く成之に会いたいなっ♪

「そうだ、今度お弁当とか作ってあげよかな♪なんてねっ♪」

距離が縮まったことを実感しつつ朝の空気を思いきりかみしめる。嗚呼!人生は素晴らしい!

「あれ?」

ポケットの中の膨らみ。手を入れるとあの時のハンカチが。

「今からなら間に合うかな」

また成之に会えるんだという喜びいっぱい抱きしめて詩乃は来た道を戻り始めた。

○○○○○○○○○○○○

体中が痛い。
天と地が逆さまだ。
さっきの男の子が何か言ってる。帽子を深く被っていて顔はよく分からない。

「おいっ、しっかりしろ!男だろ」

お前だって男だろ・・・

「いたぞっ、あそこだ!」

数人の男達の声。地面に着いた耳から直接近づいてくる足音が響く。決して柄がいいとは言えない、いや、皆人なんて平気で殺しそうな顔をしている。

「くっ来るなっ!」

よく聞くと高い声をしている。

「もうオレに構うな!来るんじゃねえ!」

そう言って懐から取り出したのは・・・

「近寄ったら切るぜ!」

手に持ったバタフライナイフがキラリと光る。

「あっいた、なりゆき―」

詩乃!?何で詩乃が!?

彼女はまだその状況に気付いていない。

「詩乃!来るな!」

少年はびっくりしている。
倒れていた男がいきなり立ち上がって大声を上げるのも驚きだが、その男の手がしっかりと掴んでいたものだ。

「・・・お前」

成之の両手が鮮血で染まってゆく。その手はしっかりとナイフの刃を握ってはなさない。

「・・・お前もこんなもん持つな」

少年のキャップ帽から大きくくりっとした目が動揺しているのが覗く。

「カワイイ顔してんだからこんな物騒なもん似合わねえよ」
「・・・」

血まみれの手で少年の指をナイフから外してゆく。
地面に落ちるナイフ。


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