『最強男女』-1
―プロローグ―
肌寒い風が髪を揺らした。
聖蘭学園(せいらんがくえん)の校門の前に、二人の少女が立っている。
「でっかいなぁ〜……って金持ちばっかりの学校だから当たり前か」
呟いた少女は、艶やかな黒髪に黒目、誰もが目を奪われるような、美しく整った顔立ちをしている。女にしては長身で、体付きもバランスが取れている。
そして隣りで苦笑する少女は、肩まである栗色の髪に濁りのない黒目。おっとりとして整った顔付きだが、美しいと言うよりは、可愛らしさが目立つ。小柄で、見るからに華奢だ。
二人は全く正反対で、長身の少女が黒なら、小柄な少女は白といったところだ。
「行こっか」
二人は同時に足を動かし、中へ入って行く。
持参した上靴に履き替え、職員室を目指す為、小柄な少女が地図らしきものを開く。
「……わっけわからん」
「ゴチャゴチャしてる上に、広いもんね」
黙って地図を見ていた長身の少女が、お手上げとでも言うように地図から目を離す。代わりに、小柄な少女が真剣な目差しで地図を見ている。
そのおかげか、無事職員室へ到着した。扉を開き、中へ入る。
「あの〜、すいませんが、篠山(ささやま)先生はどなたで?」
近くに座っていた教師に尋ねると、篠山と呼ばれた男がこちらを見た。軽く自己紹介をしたところで、篠山は立ち上がる。
「じゃ、早速教室へ行こうか」
篠山は、二人に爽やかな笑顔を向けた。
―続―