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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈覚醒篇〉-8

 どれだけ目も眩むような光の渦が生まれただろう。光の風が辺りを暴れ、いくつもの雷鳴が起こった。

失った意識をそれぞれが取り戻していく。最後に意識を取り戻したのは日向だった。誰もが送る視線の先を見つめる。

「…起きた。」

剣の呪縛から解き放たれたカルサが体を起こし、祭壇の前に立っていた。

「カルサ!」

誰が叫んだ声だろう。その声にゆっくりと彼は応えるように振り返った。

彼の表情はない、うつろな瞳、雷を身にまといただ立っているだけでも彼の存在は異色だった。ゆっくりとその視界に懐かしい人物をおさめる。

何か物言おうと口を開いてカルサは膝から崩れ落ちた。

「皇子!!」

誰よりも最初に反応して階段から落ちていくカルサを受けとめたのは千羅だった。その手にかかる重み、久しぶりに感じるカルサの体温と命の重みだった。

確かに聞こえる鼓動と寝息、戻ってきた。

「カルサ…っ。」

安心と嬉しさと緊張から解かれたのと、様々な感情が入り交じってどう表現していいか分からなくなった。ただ分かるのは大切な仲間を取り戻せたことだけ。それが現実だと確かめるために千羅はカルサを抱きしめた。

千羅の気持ちはその場にいる者達ほとんどに伝わっていた。ラファルがカルサのもとへ近付く、千羅がラファルの頭を撫でるとラファルは頭を肩から下げて自分の上にカルサを乗せるように促した。大きな体のラファルにカルサを乗せて、立ち上がる。

「寝室へ運ぼう、リュナも一緒に。」

皆が貴未の下に集まっていく。貴未から離れないようにそれぞれが肩を掴み、全体が一つの固まりになった瞬間、景色はカルサの私室に変わっていた。

カルサのベッドに二人を寝かせ、それを囲う様に彼らは並んだ。

やっと帰ってきた。

その嬉しさから誰も言葉を発せず、ただ眠る二人の姿を見ていた。嬉しい、愛しい、沸き上がる感情は人々を笑顔にさせる。

「日向、座っていないで大丈夫か?さっき体調悪そうだったろう?」

一番最初に日向を気にかけたのは千羅だった。日向は首を横に振り大丈夫だと告げる。一段落した事で押さえていた疑問が浮き出始めた。

「日向、だよな?初めまして、オレは貴未。カルサとリュナを助けてくれて本当にありがとう。」

緊張から反応が鈍くなった日向に貴未は握手を求めた。ゆっくりと差し出された日向の手を力強く握る。真直ぐ向けられる貴未の笑顔に日向もつられて笑顔になった。


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