光の風 〈覚醒篇〉-7
「聖、オレにも頼む。もう代わりも疲れた。」
「…やな。」
聖はサルスの額に指先をあて、小さな声で何かを呟いた。その瞬間サルスの体は煙につつまれ、いつかの見慣れた姿を取り戻していった。
不思議と誰もが優しい笑顔を見せる。
「千羅、瑛琳、こちらの準備は整った。鍵を見つけたんだろう?」
サルスの言葉に千羅と瑛琳は目を合わせ微笑んだ。
「紹介しよう、日向だ。」
急に人数が増えたり、姿を変えたり、目の前で凄い早さの展開に日向は唖然としていた。一気に視線は自分の下に集まる。
「彼がリュナの封印を解いたの。」
瑛琳の言葉に、レプリカは一礼した。彼女の態度をみてリュナに馴染み深いのだろう事が分かるが、依然彼女の正体を知るものはいない。気になることは皆同じだったが、今はカルサの封印解除に集中する事にした。
「日向、カルサの所へ。」
千羅はリュナを貴未に預け、日向を招いた。一気に緊張が増す、日向は大きく唾を飲み込み千羅と共に祭壇への階段を上っていく。
誰もが彼らの動きを見守っていた。
祭壇への階段を上りきると目の前には結界が施してあり、その奥に剣に胸を突きぬかれた青年が横たわっていた。千羅が足を止め、同じ様に日向も止まる。
「結界がある。今解くから待ってろ。」
千羅によって何重も施された結界が解かれてゆく。ひとつひとつ、視界が鮮やかになりカルサの姿もはっきりと映されていった。それに比例して日向の鼓動も高まってゆく。
またひとつ結界が解かれた。最後の結界が解かれカルサへの隔たりがなくなった瞬間、日向の脳裏に急激にいくつもの映像が流れ込んできた。その反作用で思わず日向は態勢を崩す。
「日向!!」
倒れそうになった彼を助けたのは千羅だった。日向の顔は青ざめ、息も荒いのに気付く。
「大丈夫…ふらついただけ。それより、行こう?」
千羅の手から離れると日向はゆっくりとカルサに近づいていった。いつのまにか彼の肩には動物の姿をした祷がいる。
日向が一歩近付く度に瑛琳は身構えていく。何が起こるか分からない。それはこの先起こり得る事に対しての構え、いつでも日向を撃てるように。
カルサの前に日向が立った。重そうな剣が目の前に横たわる青年に突き刺さっている。やるべき事は分かっているのに、日向はその術を知らない。
「千羅…僕、どうしていいか分からない。」
「オレ達はその剣には鍵以外は触れてはいけないと聞いていた。」
「じゃあ、この剣が。」
「おそらく鍵穴だ。」
千羅の言葉を聞き、日向はゆっくりと右手を上げた。やけに鼓動が響く。誰もが日向の行動を見守りながら息を飲んだ。
そして彼の手が剣に触れた。