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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈覚醒篇〉-16

ゆっくりと体を起こし、体を支えていない左手を見つめた。それは自分、指を動かし自分の意識があることを確認する。少しずつ甦る記憶を辿り、行き着いた先の答えに切なさを覚えてしまった。

まだ、生きている。

「お前は封印されてたんだぞ?」

サルスの言葉にゆっくりと顔を向けた。心配そうな表情、色んな思いが頭の中を巡りカルサは切ない微笑みで応えるしかなかった。

ふと目の端に映るものがあった。カルサはそれを確認すると目を見開き表情を変える。

「リュナ…っ!?」

まだ重く閉じられたままのまぶたはカルサの声には反応しなかった。息はしている、それだけを瞬間的に確かめた。

「リュナも、お前と同じ様に封印されていたんだ。まだ目を覚まさない。」

サルスの声を聞きながら、小刻みに震える手でカルサはリュナの頬に触れた。その表情はどこまでも切なく、後悔と理不尽さから始まった感情はさまざまな色を含み複雑になってしまった。

「怪我は…?」

「…目立った外傷はないと聞いている。」

サルスに問いかけながらも目はリュナだけを見ていた。ゆっくりと丁寧に抱き上げ、自分の懐に彼女を収める。

サルスは静かに席を立ち、部屋から出ていった。

「オレのせいで…リュナ…。」

消えそうに呟いた声は部屋中に響き渡る。苦悩から表情が歪んだ、自然と手に力が入り強く抱きしめる。

「ごめん…リュナ、ごめんな…っ!」

自分を解放し求めた途端に彼女を巻き込んでしまった。カルサは自分を責めずにはいられなかった。やはり言うべきではなかった、求めるべきではなかったと何度も自分を責める。

どれだけ強く抱きしめてもリュナの目は開こうとはしない。確かに聞こえる鼓動に喜びと後悔を抱くしかなかった。

これで眠れると胸を突きぬかれた瞬間に思ったのがいけなかったのだろうか。やはり苦しみぬかなければ戒めからは解き放たれないのだろうか。

渦巻くカルサの思いは誰に伝える訳でもなく自分の中に溶け込ませる。静かに目覚めた神は、再び戦いの日々に身を投じる事になった。

その切ない姿に、誰も声をかけることができない。


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