光の風 〈覚醒篇〉-11
「まず、御剣とは何なのか。について答えると…特殊能力を持った者、さらに神の称号を持った者と答えておこう。」
「神の称号?」
「そして、魔物騒動の主犯とされている少女だが、御剣もしくは御剣縁の者である可能性は大いに有り得る。」
「なんで分かるんや?」
「宙に浮いてたんだろう?特殊能力を使えるのは御剣に関わる者。」
御剣に縁のある者は特殊能力をもつ、御剣の子孫であったり生まれ変わりであったり、タイプは様々に存在するが何かしら関わりがある。もちろん、縁であっても何の力も持たない人もいる。覚醒遺伝で突如発揮する者もいると千羅は続けた。
「じゃあ、空間を飛べるオレや聖と紅奈も御剣に縁がある?」
「可能性はある。ただ必ずしもそうとは限らない。」
「ほんならあの人は誰なん?あの女の人。」
「彼女は玲蘭華、オレ達御剣を統べる王だ。」
千羅の言葉にその場にいた者は息を飲んだ。御剣を統べる王、冷静に考えて組織があるのであれば当然統率者が必要になる。分かってはいるが、それがあの女性だとは信じがたいものがあった。
一見普通の小柄な女性、表情も優しくとても大役を担っているようには見えない。しかし、あの強豪な侵入者に対抗できたのは彼女だけだった。彼女の力によって今回の騒動がおさまったのだ。
「神を統べる王がなんでカルサやリュナの封印を解かれんかったんや?」
聖の声がやけに低く通った。少しの沈黙のあと千羅がゆっくりと口を開く。
「分からない。あれ以来、玲蘭華も彼女と共にいたジンロも行方不明なんだ。」
ジンロという初めて聞く名前に何人かは頭の中に疑問符を浮かべた。あの時あの場に居た者はそれが誰なのか、おおよその検討はついたらしい。あの時、懸命にカルサやリュナを守り戦っていた男性の姿が思い出されたのだろう。
彼もまた行方不明ということはどういうことなのだろうか。不安がよぎる。
「何しろ、オレ達の目的はカルサとリュナを助けだす事。それを達成した今は二人が目覚めるのを待つしかない。」
多くの視線が再びカルサとリュナに集まった。確かに呼吸はしている、しかし眠りが深すぎるのか微動だにもしなかった。
「そして、何故こんな事になったかというと…狙われたとしか言いようがない。」
千羅の言葉は期待していた答えではなかった。より明確なものが答えとして返ってくるのだと思っていたのに思わず唖然としてしまう。
「そんなん…狙われたて、ここまでする位やのに!?有り得へんやろ!?」
「あの侵入者、カルサは知り合いだったみたいなんだが…。」
サルスの思いがけない言葉に一気に空気がどよめいた。あの嵐の日、確かにカルサは侵入者に向かって名前を呼んでいたのをサルスは覚えている。