光の風 〈覚醒篇〉-10
「セーラ!?あのセーラか!?」
「これで私の行動はお分りいただけたでしょうか?」
あっけにとられている周りの中で千羅と瑛琳、聖だけが無表情にレプリカを見ていた。その視線に気付いている彼女は真っすぐに返す。
「判断は任せるわ、千羅。」
瑛琳は小さな声ですべてを千羅に委ねた。千羅の瞳は冷たい。
「こちらでは何が起こっていたか、教えてくれ。まずはそこから始めよう。」
千羅の言葉を合図にお互いの情報交換が始まった。シードゥルサ側ではサルスがカルサになり国を治めていたこと、レプリカがリュナのフリをしていたこと、結界を守り続けていたこと、天気がおかしくなったこと、カルサのいた祭壇に侵入者はなかったこと、だいたいの状況を話した。
また千羅側ではリュナの封印が解かれた状況や、なぜこんなに時間がかかったのか、日向との関わりなどを話した。
「つまり、日向に昔の記憶がなくて自分でも正体が分からないという事か。」
「うん、ごめん…。」
サルスの言葉に日向は思わず謝った。
「お前が謝る事じゃない、それにサルスも責めた訳ではない。気にするな。」
予想外の素早い千羅のフォローに日向は少し照れたように笑って頷いた。思わぬ千羅の優しさを見た瑛琳は微笑む。
「言い方を間違えた、悪かったな日向。」
「僕の方こそ。」
「…和んでるとこ悪いんやけどな…。」
和やかな空気が流れた部屋の中で、低く聖の声が響いた。一気に視線が聖の方へ集まる。彼はどこまでも慎重に空気を読み、言葉を選んでいた。
「これだけはハッキリさせとかなあかんと思うねんや。なんでカルサとリュナがこうなったか。」
その問いかけは真っすぐに千羅に向けられていた。もちろん、それはそこにいる誰もが分かっていた。
「うちも気になることがある。あんたらが従ったあの女の人の正体。」
「あと、前にオレと聖が見た結界を壊して魔物を送り込んできた女の子。あの子も御剣なのか。」
「もっと言うならば…御剣とは何なのか。だ。」
今まで持っていた疑問をこの機会にすべて千羅にぶつけ始めた。くるであろうと分かっていた千羅は顔色一つ変える事無く受け入れていく。
誰もが静かに千羅の言葉を待った。