ESPECIALLY FOR YOU-3
残念なんて言わないでよ。
彼女いないなんて言わないでよ。
美人になったなんて言わないでよ。
「今日何してたん?」
「エステ行ってた」
「エステとか洒落てんなぁ」
「ダイエット中やねん」
「ダイエット?いやいや、十分やろ」
「だってドレスは綺麗に着たいやん?!」
「……ドレス?」
横目で話していたあなたが急に顔をこちらに向けたから、私は何となく「あっ」と思った。
「ドレスって…」
頼りなさそうなあなたの声に…胸が痛い。
「…あたし結婚するねん」
一番好きだった人。
ううん、今でも一番好きな人。
そんなあなたに私は胸の痛みを必死に堪えて"結婚"という言葉を口にした。
外はもう真っ暗で、あなたがどんな顔をしていたか分からなかった。
分からなくてよかったのかもしれない。
「そっか〜俺ら25やもんなぁ」
「………」
私は流れゆく窓の外の景色に目をやった。
淡いオレンジの街灯の明かりが一つ、また一つと過ぎて行く。
もう時間は止まってはくれない。
『行かないで。今この距離から離れないで』
苦しそうに歌うこの歌詞は一体どっちの気持ち?
何だか目の前がうまく見えないよ。