ESPECIALLY FOR YOU-2
「彼氏いるんか。そりゃ残念」
「そっちこそ彼女いるんじゃないの?」
「ちょっと前に別れてん」
「…そう…なんや」
一緒にいるとあの頃の気持ちを思い出す。
あなたがフリーだと聞く度に揺らいでしまう。
大学を卒業してからの三年間あなたのことは薄い存在だったのに、逢うと一瞬にして大きい存在になる。
だから、"残念"なんて言わないで。ずるいよ。
「じゃぁ普通に家まで送らせていただきます」
「ありがとう」
「あ、今度同窓会あるらしいやん?」
「あぁ、うん」
「行く?」
「行くよ、そっちは?」
「行く行く」
赤信号で止まると今かかっているCDを取り出し、私の前に腕を伸ばし別のCDを手に取る。
そんなあなたからは私と同じ香水の匂い。
『めっちゃいい匂いする!』
『は?』
『香水』
『あんたはおっさんか』
『何使ってる?』
『ブルガリ』
『ええなぁ、俺もそれにしよ!』
そう言ってあなたは私と同じ香水にしたよね。
今も使ってるなんて、何だか繋がってるみたいでまた切なくなる。
私って存在があなたの中にちゃんと残ってるのかなって思ってしまうじゃない。
信号は青に変わって、車は再び動きだす。車内に流れるのは切ないラブソング。
「何か雰囲気変わったな」
「あたし?」
「うん、何か…」
「美人になった?」
「そうそう」
"いや〜それはないかな"なんて言ってくれるかと思ったら、予想外な言葉が返ってきて頬が熱くなった。