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右手の記憶
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右手の記憶-5

いったい何を見たのか。彼の右手はいったい何を知っていたのか。それはあまりに下品すぎて私が口にすることもはばかられることなので彼の右手にでも聞いてみてほしい。

ただ言えることは、純粋な彼も年ごろの少年だったということ。少なくともあれは私が好きだからこその、私を想っての行為だったのだということ。そして、やはり男なんてロクなもんじゃなかったんだってこと。

映像の中で彼は私の名前を呟いていた。いったい彼の想像の中の私はなにをして、あるいはされていたのだろう。

私はすっかり止まった涙をぬぐい立ち上がり、もう一度彼を振り返った。


…でもあんたはちょっと素敵だったよ。


いつか、何十年も経って、私はこの晴れた日の穏やかな日差しと綺麗なあの血の色を思い出し、彼の純粋な心と私の一瞬の切ない恋心を懐かしく憂れうのだろう。

甘い、そして少しだけ酸っぱい、私の青春の記憶として。

Fin


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