俺らの明日FINAL-3
〜卒業式編〜
「いや〜。長かった。」
「最後の最後まで校長の話は長かったな。」
「でもさすがに卒業式をサボるわけにもいかんしな。」
「ふい〜、しかしスーツってのは窮屈だな。」
「ああ。夏とか大変だろうな。」
「お前自衛隊行くんだから関係ないじゃん。」
「でもあの、迷彩服っていうのかな?あれも暑そうだな。」
「まあ、そうかもな。」
「しかし、お前が受かるとはね〜。」
「なんだよ、文句あんのかよ。」
「いや、別に。」
「浪人生が偉そうなこと言うんじゃねーよ。」
「まだ決まってねーぞ!後期がある。」
「お前レベル高いとこ目指しすぎなんだよ。もっと自分の身のあったところをだな。」
「政治家になろうと思うならあれぐらいじゃないといけねーんだよ。」
「さいですか。」
「しかしいよいよ俺らも卒業なんだな。」
「全然実感沸かねーけどな。」
「言えてる。また四月から学校ある気分だからな。」
「そうそう。」
「でもこうして喋れんのもあと少しなんだろうな。」
「何でだ?また会えばいいだけの話じゃん。」
「でも賢治は横須賀だろ?それにそうそう全員の都合が合うかよ。」
「言われてみればそうかもな。」
「だろ?」
「・・・」
「おいおい、なんか湿っぽくなっちまったじゃねーか。」
「す、すまん。」
「いや、いいんだけどよ。」
「あのさ〜、俺ずっと思ってたんだけどよ。」
「何だ?」
「『蛍の光』あるじゃん?」
「ああ、今日歌ったな。」
「あれでさ、最初に『蛍の光、窓の雪』ってあるじゃん。」
「あるな。」
「あれおかしくね?」
「何で?」
「蛍ってさ、六月の昆虫じゃん。」
「・・・」
「雪と同時に見んの不可能じゃね?」
「言われてみれば」
「確かにそうだな。」
「いや、あれは蛍雪の功からきてるんだろ?」
「どういう意味だ?」
「中国の偉い人が子供のころ蛍の光と雪明かりで勉強したってこと。」
「蛍の光はともかく雪の白さで勉強は無理だろ。」
「知らね。生まれてこのかた雪なんざ数えるほどしか見てないからな。」
「雪自体は光らねーから無理じゃね?」
「確かにそうかも。」
「けど、それを今言われてもな。」
「土壇場で言っちゃったよ、みたいな。」
「じゃあそんなんじゃなくてもっと最近の曲とかにすればいいんだよ。」
「例えば?」
「・・・ラップとか。」
「お前本気で馬鹿だな。」
「どんだけファンキーな卒業式なんだよ。」
「教頭がDJやって。」
「校長がリズム刻みながら卒業証書渡して。」
「教育委員会の人たちがバックダンサー。」
「見てぇ〜!」
「そうかぁ?」
「五分で厭きるに百円。」
「同感。」
「やめやめ。神聖な卒業式をそれ以上汚すな。」
「そうだな。」
「でも俺らも最後の最後まで変わらんな。」
「当たり前だ。」
「それでいいんだよ。」
「そうだな。」
「まぁ、なんだかんだ言ってここが俺らの出発点だな。」
「かっこいいじゃん。」
「ON YOUR MARKだな。」
「どういう意味だ?」
「陸上で使う、『位置について』ってやつだよ。」
「なるほどね。」
「ON YOUR MARKか。いいじゃん。」
「ああ。かっこいいな。」
「そんじゃ、最後の打ち上げに行きますか。」
「そうだな。」
「さらば、我が母校、我がクラス。」
「無駄にかっこつけんじゃねーよ。」
「だまらっしゃい。」
「わははは。」
「最高だよ、てめえらは。」
「お前もだよ。」
「そりゃどーも。」