たったひとこと【第3話:Shall we ランチ?】-1
屋上。
お昼時のお約束スポットだが、月島高校は屋外に出る扉に錠がかけてあって、生徒が立ち入ることは出来ない。
しかし今、その屋上には5つの影。
第3話:《Shall we ランチ?》
「ふっふ―ん♪やっぱ風紀委員となると顔がきくわ♪」
人さし指で鍵をクルクルと回す上機嫌なマリ姉。
「誰にもジャマが入らない所っていったらココ位なもんだしね♪」
「マリ姉、本当に入って大丈夫なんですか?」
「ン?その人誰かの姉ちゃんなんか?」
一平がヤキソバパン片手に口を挟む。
「てかアンタは誰なのよ?」
「これはこれは紹介が遅れまして。私は敏腕プロデュ―サ―川野一平と申します。気軽に一平とお呼び下さい♪成之くんの親友でありまして、オモシロそうな匂いが・・・いやいや親友のことが心配でついてきた次第で。ちなみに彼女募集中でございます♪あなたは?」
やや道化じみた動きでまくしたてた後、くるめの両手をぎゅっと握る一平。
「う、潤原くるめです」
「くるめちゃんか♪最初見た時は子供かおもてたけど改めて見るとカワイイなあ♪」
「よ、よろしくお願いします」
カワイイと言われたことよりも苦手な関西弁キャラに戸惑うくるめ。
「よく分からんが、私は楮山麻里音だ。皆よりイッコ上なんだ。クラスは同じだけどな。だからマリ姉と呼ばれてる」
「麻里音さんか。何やタレみたいな名前やな。アッハハハ」
くるめの肩がビクッと震える。
「・・・あ?今何て」
「せやからマリネみたいな名前・・・」
マリ姉の掌が一平の頭をがしっと鷲掴む。どうやら禁句に触れてしまったらしい。
「だ・れ・が・マリネだって?ああん」
「アアア!姉さん、言うてない!言うてないです!せやから離し・・・イタイイタイ!!」
過激な自己紹介合戦の最中、石像化している主役2人。
「・・・」
「・・・」
「あの、生きてますか、2人共?」
くるめが心配になって声をかける。
「何ガチガチになっとんねん成之」
悪魔の手から逃れた一平が肩をポンポンと叩く。
「お前のいっつもの爆笑ネタで場内を沸かせ・・・」
言い終わらない内に一平の口は閉ざされた。成之のチョ―クスリ―パ―が見事に決まっている。
「!何すんね・・・」
「・・・よく聞け。詩乃のいる前でネタとか普段のオレについての会話は一切禁じる。もし守れなかった時は・・・」
「と、時は?」
「・・・お盆休みに先祖の墓と川野家の墓にも参らねばならなくなる」
怖えええええーーー!!!
「わ、分かりました。他言はしません・・・」