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舞い斬る華
【ファンタジー 恋愛小説】

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舞い斬る華 番外 椿の過去編-4

対戦相手は先ほど知った、憎きあいつ。
愛していた彼女を奪っていたあいつ。
そして彼女を利用し我が家を追い詰めたあいつ。

彼の顔は、まさに鬼だった。

試合開始直前に彼は対戦相手に聞いた。

「なぜあんなことをしたのか…と」

相手は嘲笑うように「バ力は賢い奴の家畜なんだよ」と返した。

彼はその時、怒りに沸騰していた。

試合よりも相手を殺すという恨みの念が全身を狂気に奮い立たせた。

試合開始と同時に相手は彼の弱点を突いてくる。

それが思い切り腕にクリーンヒット…

腕一本が宙を舞う

しかし彼はそんなポイントもともとくれてやるつもりで突っ込み返していた。

そしてまるで引き裂くように片手だけガタイのいい相手を真っ二つに切り飛ばしていた。

たった、一撃で勝負はついた。

そして飛び散った上半身の元に行き、彼は相手を見下すように立ち、その顔の横に唾を吐いて言い捨てた。
「次にてめぇを見た時、二度と忘れられないような地獄を見せてやる」

相手は真っ青になった。

そしてすごすごと逃げるように舞台を降り、そのまま3位決定戦にも出ずに女と共に周囲から姿をくらました。


その瞬間から彼は、もう女はいらない…あんなのは信用できないし自分には不必要だと悟るような感情を覚えていた。

舞台を降りながら彼は心の中でつぶやく


「何ももう要らない…」


それから、彼はその大会での優勝をかわきりに、どんどん高い賞金の大会を制覇していった。

そして賞金で家の負債もなくなり、むしろ家は彼の仕送りで豊かになっていた。

しかし、彼はもう大学にも家にも戻ることはしなかった。



彼は人との付き合いを避けた。

強かったし、元々華のある派手な剣術が好きだったのでそういう戦いをしていたし、ルックスも良く雑誌なども飾っていたので、それなりに人気はあった
それゆえ、人当たりは良くしていたが、中身は冷め切った感情が常にあった。

もちろんモテていて、多くの女性が言い寄ってきていた。
しかし、そういう女も皆避けてきた。


彼は一人、ホテルで寝転がってつぶやいた。

「俺には誰もいらないのさ……俺にはこの刀がある……」





−−−−−−−−−−−−

そして現在…

椿はシルディアに心の中で言いかけた
『暖かいな…その笑顔…
俺はまた人を信じ、愛することが出来るのかな…』


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