変化の夜-2
着いた先は、飲み会の会場からそう遠くない住宅街のマンション。
「…ここって、田畑の家?」
「そうですよ。遠慮しないで入ってください」
そういうとドアを開け、私を中へと促す。
「今お茶でも淹れますから、適当に座っててください」
そういうと、キッチンでお湯をわかし始める。
けっこう片付いてて、キレイな部屋。
持ち主に似るとかよく言うけど、田畑の部屋はまさにそれだ。
なんかホッとできる。
「ハイ、お待ちどうさま」
「ありがとう」
田畑が差し出したマグカップを受けとる。
しばらくの沈黙のあと、私は口を開いた。
「さっき泣いちゃってごめんね。それから泣いてるの隠してくれてありがと。いっつも田畑には助けられてばっかりだね」
「あれ、どうしたんですか?今日はヤケに素直ですね」
「…もう絶対ありがとうとか言わない」
「あ〜ウソウソ!もう変なこと言いませんから!」
慌てる田畑に思わず吹き出す。
「よくわかんないや。田畑とああなってから、田畑が側にいないの寂しい」
「亜紀さん?」
「でもそれってただ人恋しいだけなのかな?田畑に甘えてるのかな?」
田畑は客観的に見て素敵な男性。
そんな人が助けてくれたから、私は渡りに舟とか思ってるんじゃないの?
そんな疑問が胸をかすめる。
田畑が私をどう思ってるかなんてわからない。
だけど、差し出された手にこのまま甘えていいんだろうか?
素直に甘えられない。
「それでいいんじゃないですか?」
私の心を読み取ったかのように、田畑が口を開く。
「俺が亜紀さんの助けになったことは嬉しい。俺が甘えていいって思ってるんだから、誰に義理立てする必要も、遠慮する必要もないでしょう。たまには誰か利用したってバチ当たりませんよ」
優しい言葉に思わず顔を見る。
田畑はあのときと同じ、柔らかい笑顔で私を見つめている。
「田畑…」
「亜紀さんは頑張りすぎだ。たまには甘えていいんだよ」
そういって田畑はその広い胸に私を引き寄せる。
ああ、なんで田畑はこんなに私をいたわってくれるんだろう。
なんでこんなにあったかいんだろう。
「亜紀…」
田畑が私の顎を上げ、唇を合わせる。
「んっ…」
柔らかく、ついばむように。甘いキス。
「はぁっ…んん…」
キスの甘さに私の体はそれだけで熱くなってしまう。
「亜紀、キスだけで感じてない?」
「…うるさい」
クスクス笑いながら、田畑が私を抱き上げ、ベッドにふわりと下ろした。
「亜紀…」
優しいキスがおりてくる。
まぶたに、頬に、首筋に。
「たばたぁ…」
「…ダメ、田畑じゃないでしょ?」
「え?」
聞き返す私に返事をせず、田畑はそのまま私の服を脱がせていく。
ちゅっ…ちゅぅ…
田畑が私の胸を優しく舌で攻め立てる。
「んっ…やあぁっ…たばたぁ…」
「…だから、田畑じゃないって」
ずっ…
田畑の指が私の中に入ってくる。
「あんっっ…やあぁ…いきなりしないでぇ…」
私声が聞こえないかのように田畑は濡れそぼったそこをかき混ぜ、ぐちゃぐちゃにしていく。
「やあぁっ!!…たばたぁ…!!」
「かわいいよ、亜紀…」
その声に目を開くと田畑が私を見ている。
熱を帯びた、いつもとは違う男の顔。
「たばたぁ…きもちいぃよぅ…。我慢できない」
私の懇願にちょっと悲しそうな顔をする田畑。
「田畑、じゃないでしょ?名前で呼んで?」
「あ…」
頬に当てられた手に、私の手を重ねる。
そのまま、キス一つ。
「慶介…入れて…」
「お望み通りに」
ふっと表情を緩めた田畑…ううん、慶介が私の中に入ってくる。
ズッ…。
「あっっ…ひゃあぁん…!!」
私はたまらず悲鳴をあげる。
「うわっ…亜紀やばいって。きもちよすぎっ…」
「はぁっ…私も…気持ちいいよっ…」
慶介はその言葉にニヤリとして、
「…じゃあもっと気持ち良くしてあげる」
ずっずっ…
慶介が腰を使い動き始める。
「…あんっ…はあぁっ…!」
慶介の熱い塊が私の中を掻き回す。
私の中から聞こえる音が思考を狂わせる。
「けいすけぇ…はぁあんっ!!気持ちいぃっ…」
「あきっ…あきっ…!!いいよ…もっと…感じてっ…!!」
慶介の声も限界が近いことを感じさせた。
「はあぁぁぁ…!!やんっ…!!ダメ!イクっ…ああぁぁ…イクぅ…!!」
「ああぁ!! おれもイクよっ…あっっ!!イク・・・イク…!!」
気がつくと、田畑の寝顔がすぐ横にある。
どうやら眠ってしまってたようだ。
窓の方を見れば、ほんのり明るい。
喉が渇いた私は、水を飲もうとベッドからそっと身を起こした。
キッチンで水を汲んで、部屋に戻る私。
ふと足下に写真立てが落ちていることに気づく。
それを拾い上げて見ると、ウェディングドレス姿の綺麗な女の人が写ってた。
隣には田畑。
「ん…亜紀さん?もう起きたの?」
ベッドから田畑の眠そうな声がする。
「うん。喉渇いたからお水もらったよ」
写真立てを持ったまま、ベッドに腰を下ろした。
「これ、落ちてたけど、飾らなくていいの?」
写真立てを田畑の目の前にひらひらさせながら尋ねる。
「…ああ、落としっぱなしにしてた。姉ちゃんに怒られちゃうな」
そう言って苦笑しながら写真立てを受け取る田畑。
「お姉さん?田畑にお姉さんいたんだ?」
「うん。俺が高校の時に嫁に行っちゃったけどね。これは結婚式の写真」
「ふーん…。綺麗なお姉さんだね」
「ははっ、ありがとう。ちょっと抜けてるけどね」
そう言って田畑が本棚に写真立てを置く。