悪霊の作り方-2
…ギュゥ…
胸が締め付けられるこの感じ…
今までで一番強いかも…
私は彼氏の顔を見ながらデートしたり二人だけで刻んだ時間を思い出していた。
いつもならすぐまた諦めたように冷めて終わるのだけれど、今日はずっとそこから目が話せなかった
私の心からどんどんと記憶が溢れ出した。
そして棺が閉まるその瞬間、私は自分の目から涙が出ているところを見た。
もしかしたら、それは棺に入れられた物に当たった光の反射を見間違えたのかもしれない
でも、確かに今の誰にも見えない私の瞳からは、今まで経験したことの無い大量な涙が頬を伝わっていた。
そして彼氏が急に閉じられた棺に駆け寄り、横から覆いかぶさるようにしがみつき
会場の誰もが聞こえるようなうめき声を出して泣いた。
それを見て、誰もがそれを止めようとはしなかった。
私を含めて、その光景に何人もが涙していた…
実際は1分くらいだっただろうか
とても長く感じたその状態を解いて、彼氏は親にすみませんと式を中断させたことに頭を下げると自分の席へと戻っていった…
すると、そこで急に見えないはずの私が背後から声をかけられる。
え?っと振り向くと、
ソコには明らかにこの世の人間とは思えないけれど、これといって異形をしているわけでもない者が現れた
「俗に言うあの世からお迎えに来ましたけれど、そろそろ皆へのお別れは済みましたか?」
その者はそういうと、これから私を上へと案内するようなそぶりを見せる。
「すみません、まだ…」
そう私は返すとまた彼氏のほうを見た。
「そうですか…では整理がついたら上へ上へと高くに上がってきてください。
案内者が見つけてくれますから」
そういうとその者はスゥっと上へと上がっていった。
そして肉眼で見えるか見えないかの位置で、遠くても関係のないような直接身に響く声でこう付け加えた。
「そうそう、いつまでソッチに居ても平気ですがその首の六文銭は大切にいたしなさい。
こっちへ来て役立つかもしれませんから…」
そういい終える頃にはその者の姿はとうに見えなくなっていた。
六文銭とは、よく言う地獄の沙汰も金次第っていうように、あの世へもって逝きなさいとお金を首にかけて霊を送る慣わしだ。
ただの迷信だと思ってたけど、本当にこれ効果あるんだ…と、少し感心する
そして私はずっとココに居ても良いんだとの言葉に安心感を覚えたのか、彼氏がこの先どう生きていくのか見たくなってしまい、
もう少しの間…せめてあの人が立ち直れるまでは見届けたいと思い、彼の後をついて行く事に決めた。