終わりと始まり(後編)-1
失いたくない。大切な人がいなくなるのはもう耐えられない。
俺は…
恋する事を放棄したかった。なのに…。
「大丈夫?」
そんな些細な言葉さえやけに暖かく感じる。
「平気。って言ったら嘘になるかな」
こいつは数少ない女友達の一人。俺が親友と言える程信頼してる人。
そして…
別れたあいつの親友でもある。
「何かあったら言ってね?力になるから」
こいつは全ての事情を知ってる。俺はまだ別れた事を話してなかったが、おそらくもう一方から聞いたのだろう。
「ああ。ありがとう。今晩電話する」
一人になりたくなかった。このどうしようもない孤独感から抜け出したかった。
「愚痴なら腐るほど聞いてやるよ」
俺は嫌われてもおかしくない。女は普通、同姓の方に味方すると思っていた。 嬉しかった。彼女の心遣いが。
その日の夜、俺は全てを話した。あいつとの思い出。別れ話の全貌。そして…
どれだけあいつを愛していたかを。彼女は全てを聞いてくれた。文句の一つも言わずに。俺の長い泣き言が終わり彼女は言った。
「私がついてるから。いつでも支えるから」
ふと不思議に思った。どうしてこんなに歯牙にかけてくれるのだろう、と。その答えはすぐにあった。
「友達でしょ」
そう。俺達は友達。いなくはならない。愛情はかりそめだが、友情は永遠。そう信じている。だから俺は彼女を絶対的に信頼していた。
彼女は好きだが、それは友達としての好きだ。結して恋心ではない。
そう思いたかった。彼女とはずっとこの関係でいたかった。
でも…
俺はまた間違いを犯してしまうことになる。
つづく