刃に心《第14話・サイレントマインド〜静かなる想い》-1
朝。疾風はまどろみながら自分の身体がゆさゆさと揺すられているのに気付いた。
霞だろうか…
いや、霞ならこんな優しく起こしたりはしない。
ならば、楓か…
しかし、楓も霞とそんなに大差はないはず。
じゃあ…今、自分の身体を揺すっているのは誰なのだろう?
疾風はゆっくりと目を開けた。眩い陽射に目を細め、身体を起こす。
「……おはよう…」
意外な人物がベッドの側にいた。
「……おはよう…ございます…」
疾風は漠然と思った。
(あぁ、うん…今回は夢オチか…うん…おやすみ……)
ちょっと、勝手に夢オチにしないで下さい!
《第14話・サイレントマインド〜静かなる想い》
◆◇◆◇◆◇◆◇
「……夢オチじゃないのか?」
現実です。
「…じゃあ、何で刃梛枷が此所にいるんだ?」
すると、ベッド脇に佇んでいる刃梛枷は呟くように言った。
「……起こしに来た…」
それはそうだ。
実際にゆさゆさと優しく揺すられていたのだから。
「……後、一緒に学校に行こうと思ったから…」
刃梛枷の口から小さな声が発せられる。
「……だから…」
突然、扉がコンコンと鳴った。
疾風は慌てて、「ちょっと待って」と声を出そうとした。
だが、無情にも紙一重の差で扉は開いてしまった。
「疾風、起きておる………か…」
部屋を覗き込んだ楓はドアノブを握ったまま固まった。
「…やっぱ…夢オチに…」
なりません。
「な、な、な、な、な、何故!疾風の部屋に刃梛枷がおるのだああああああ!」
楓がわなわなと震えながら絶叫する。
疾風は額に手を当てて重い溜め息を吐いた。
「疾風が連れ込んだのか!?」
「連れ込むかッ!」
「じゃあ、何故刃梛枷が此所におるのだ!何故だ!私はびっくりですよ!」
「俺だってびっくりですよ!朝、起きたら先日死闘を演じた相手がいたら、そりゃあ、びっくりですよ!ついでに、びっくりし過ぎて二人とも口調がおかしくなってますけど、この辺で一旦落ち着きませんか!?」
「ああ!そうしましょう!」
二人は一旦、口を閉ざすと肩で息をし始めた。