刃に心《第14話・サイレントマインド〜静かなる想い》-9
「…小鳥遊の奴…ズルイ…」
千夜子が羨ましそうにその光景を見つめる。
「アタシも怪我したい!」
「させてあげましょうか?」
「…い、いや…やっぱ…やめとく…」
「何でですか?大丈夫ですよ。綺麗に折りますから♪」
それを聞いて、千夜子は逃げるように階段を駆け降りてった。
その後を朧が笑みを浮かべたまま追う。
「………」
刃梛枷が無言で歩き出す。僅かだが、ピリピリとしたものを感じる。
「アレ?はなちゃんもしかして、ちょいとご立腹?」
「……怒っていない…」
希早紀の問いに刃梛枷はそう返した。
「……ただ………不快…」
苦笑する希早紀の横を無言で刃梛枷が降りていく。
「さあ、希早紀も帰ろう」
武慶が疾風の鞄を持って言う。
「疾風君も大変だぁ」
「そうだな」
「そういえば、しぃ君は好きな人いないの?」
武慶の表情が固まる。
「いるんだぁ〜♪誰?」
「そ、それは…」
顔色が赤一色になり、口ごもる。
「んふふ♪誰〜♪」
「その…」
「教えてよ〜♪そうしたら、私が全身全霊をもって、一生懸命に君のラブを応援しますから♪」
武慶がうなだれる。頭上から黒い影が降りている。
希早紀はそんな様子にキョトンとする。
「う〜む、高嶺の花かい?と、いうことは月路先輩かな?」
武慶にかかる影が濃さを増す。
「とにかく、諦めたらそこで試合終了ですぞ!」
「………はい…頑張ります……」
武慶はそう言うのがやっとだった。
「うん♪頑張ろ♪」
負けるな、少年少女達よ。
「俺は…小鳥遊の歯がゆい気持ちがよく判る…」
「?」
続く…