刃に心《第14話・サイレントマインド〜静かなる想い》-5
◆◇◆◇◆◇◆◇
「疾風、帰るぞ」
授業も終わり、楓が鞄を持ちながら言った。
「なんか機嫌直った?」
「直したのだ。まったく…鈍いのだから…」
「?」
「とにかくだ!帰るぞ!」
「あ…ちょっと待っててくれる?」
「何故だ?」
「刃梛枷に呼ばれてる」
楓の表情が凍り付いた。
「なんか、話があるらしい。そんなに時間はかからないみたいだから待っててくれない?」
疾風はそう言うが、楓は反応しない。
呆然と立ち尽くし、顔からは色が失われている。
「楓?どうしたんだ?」
「疾風…ど、何処に…呼び出されておるのだ…?」
「ん?屋上だけど…」
「何の話なのだ!」
「さ、さあ…」
むぅ〜っとむくれる楓に押されつつ、疾風は壁にかけられた時計を見た。
「あ、あの時間だから…ちょっと行ってくる!」
そして、逃げるように駆け出した。
「あ、ちょっと待て!」
その声を出した時には疾風はすでに教室の外。
「…疾風の…馬鹿者…」
小さく溜め息のようにそんな言葉を吐き出した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「……呼び出してごめんなさい…」
「いや、別に大丈夫だよ」
夕日の中で疾風が答える。
「…何が大丈夫なのだ…私を放ったらかしにしおって……」
「やっぱ、殴りてぇ…うぅ〜疾風〜」
屋上の出入り口のところで息を潜め、その様子を窺う者達がいた。
「まあまあ、此所はひとまず落ち着いて。様子を見てからでも遅くはないんじゃない?」
「そうだな」
「同」
「感」
「私もです♪」
「何で朧殿まで…」
「ちょっと、疾風さんに用事があったので来てみれば、こんな面白いことになってるじゃないですかぁ♪これは見なくてはと思いましてね♪」
黒いオーラを隠すたおやかな笑み。
「彼方、どうしたんだ?」
ガッチガチに緊張した彼方に武慶が話しかける。
「あ、あの!俺…いや、僕、疾風の友達の田中彼方と言います!月路ファン倶楽部会員ナンバー109です!以後、お見知りおきを!」
両手をビシッと太股に付けて、直立不動のままで言う。
すると、朧はスッと右手を差し出して言った。