たったひとこと【第2話:こんな2人】-2
「ん?」
くるめが耳を貸してとマリ姉にジェスチャーする。
「何?」
「あの前から不思議だったんですけど、詩乃のあのテンションでいけば楽勝で告白できるんじゃないんですか」
「あ、くるめは2人でいるトコあんまり見ないからね」
腕組みして続けるマリ姉。
「詩乃と成之は小学校からの幼なじみですごく仲も良かったらしいのよ。ただ小学の卒業前に何かあったらしくて、それ以来お互い素の自分を見せると嫌われると思いこんでんの」
「・・・そのこと、詩乃には?」
「何度も言ったわよ。でも嘘だ嘘だの一点張りで聞く耳持たないから」
まだ呆けたようにぬいぐるみを離さない詩乃をチラとみて
「しっかしアイツのどこがいいのかね〜。馬鹿だしトラブルメーカーだしお調子者だし」
ムッとする詩乃。
「で、でもいい所だっていっぱいあるもん!いつも気遣ってくれるし、優しいし、守ってくれるし、よく見たら結構男前だし・・・ああっもう、好き好き成之大好きい・・・・アレ?マリ姉は?」
くるめがくいっくいっと指さししている。その先には、バタンと閉まる教室の引き戸。
「詩乃が告白出来そうだから成之くん呼んでくるって」
「ああそう。ってエエ―――!!!??」
○○○○○○○○○○○○
月島高校1年Dクラス
クラス中の男子が成之の机の周りに集まっている。皆、目をキラキラさせて成之の話に聞きいっている。
「それでそれで!消防隊の人が来て!?」
椅子に立っている成之が胸と股間を隠す仕草で体をくねらせ
「全裸見られた上に変質者扱いされて事情聴取されちゃった―♪」
窓ガラスが割れんばかりの大爆笑が教室中に響き渡る。
皆目に涙を浮かべて笑っている。床に転がって足をバタバタさせている者さえいる。
「くひっははは!ひ、久しぶりの大ヒットだな!ぷっくくく」
「やっぱ成之はおもしれ―わ!また新ネタ仕入れといてくれよな!」
(オレが相手したいのはお前らじゃねえっての)
顔は笑っているが成之の心の中はため息の連続だった。
人を笑わせるのは嫌いじゃない。むしろ楽しい。自分が狙った所でズバズバ笑いが取れる快感はちょっと他では味わえないものだ。
ただ、今日は辛かった。
「はい、ご苦労さん♪今日の賞金や」
ふてくされて机に突っ伏してる成之の目の前にチャラチャラと硬貨が落ちてくる。100円玉だが、集めれば二千円位にはなるだろう。
「いや―、やっぱりオレとお前は相性ええな!お前がネタを仕入れてオレがプロデュースする。今回も満員御礼大成功やで♪」
「そうか。じゃあこういうのはどうだ?朝から機嫌悪い男にちょっかい出したが為にボコボコにされる男の話は?おもしろいぞお―」
「うっ!ま、また今度にしとくわ・・・」