たったひとこと【第1話:どんな2人?】-2
第1話:《どんな2人?》
○○○○○○○○○○○○
同刻、布団にくるまっている者が1人。
さっきとはうって変わって綺麗な可愛らしい部屋で抱き枕をぎゅうっと抱えて眠っている。
「ん、なりぃ、んむう・・・」
余程いい夢なのだろうか、ヨダレがつうっと一筋流れる。おいしい物でも食べているのかもしれない。
ピピピピッ、ピピピピッ
「ん・・・」
可愛らしい某ネズミキャラの目覚ましが朝を告げる。
ピピピピッ、ピピピピッ
「・・・むぅ、もうちょっとだけ・・・」
ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピ・・・
プチ。
え?
「あ―もうっ!いい夢みてたのに・コ・ノ・ヤ・ロ―!!」
ガシャ―ン!!
・・・そして少女のチョップによって時計はその早すぎる生涯に幕を降ろした。
時計物語・完
とは終われない訳で。
無惨に散った某ネズミキャラの残骸を見て頭を抱える女の子。
「あ〜あ、またやっちゃった・・今月ピンチなのに、はぁあ」
まだ若いのに不釣り合いなため息をひとつ。
「って、んなバアイじゃなかった―!早くしないと」
「ね―ちゃん、朝なんだからもうちょっと静かにしてよ」
寝呆け眼でドアの前に立っているのは彼女の弟らしい。流行っているアニメのパジャマを着ている。まだ小学生だろう。
「ってお母さんとお父さんとおじいちゃんとおばあちゃんから」
「・・・要するに家族全員から苦情来てんのね。努力しますって伝えといて」
「あと夜中に『愛してる〜ん、な〜り〜ゆ〜き〜』とか『今日もカッコよかった〜ん・』とか気持ち悪い声出すのもやめて。あ、これは僕から」
途端、顔が真っ赤になる姉。
「な、何ガキが勝手に独り言聞いてんのよ!いいかげんにしないと・・・」
「し―の―?もう出る時間でしょ―?」
階下から母の間野びした声が響く。
「い―ま―い―く―!将太、帰ってきたらただじゃおかないからね!」
捨て台詞を残して消えた姉を見届けて、改めて彼女の部屋をまじまじと見つめる。
そこいら中にあるぬいぐるみ、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ。百は越えているであろうぬいぐるみのキャラは全部抱き枕と同じ。デフォルメされた男の子。
「・・・僕には分かんないや」
そう言って欠伸をひとつ。自分の部屋にランドセルを取りに行った。