ふたり(最終回)【それから―U】-2
「嬉しい……」
エリカは俺の胸に顔を擦り付ける。
「これであたしたち、堂々と抱き合えるんだよね。」
……そうだ。
これまで何度か抱き合ったことはあったけど、今ほど……幸せな気持ちになったことはない。
エリカも同じように感じてるんだろうか。
すると不意にエリカは顔を上げ、頬をぷくっと膨らました。
「ふーーん、ユキは彼女が抱き付いてきても抱き締め返さないんだ。」
彼女……か
「ふふっ、ごめん。あんまり嬉しすぎて放心状態になってた。」
俺もエリカを抱き締め返した。
エリカに負けないくらいの力を籠めて。
……幸せだ。
エリカの温もりが愛しくて、ずっとずっと抱き締め続けた。
これなら
『我が人生、一片の悔い無し』
とか言って死ねるな。
ふっとエリカの腕から力が抜けた。
俺も合わせて腕を離す。
エリカはユキの手を取り、顔を上げる。
ふたりは、見つめ合う。
「あたしたち……恋人同士だよね。」
そう言いながらエリカは目を閉じる。
ユキは緊張気味に微笑んで、エリカの手をきゅっと握る。
ゆっくりと、ふたりの距離が近付いていく……
そして、それはまさに触れ合う寸前だった。
「ニャーー!!!」
「「 うわっ!! 」」
……ふたりの足元を黒猫が駆け抜けていく。
しんと静まりかえった廊下でふたりは顔を見合わせて笑った。