終わりと始まり(前編)-1
男の涙はみっともない。 ずっとそう思ってきた。
『ごめんなさい』
その題名のメールを見た瞬間全てを悟った。
薄々気付いていた。最近メールの返信が遅い。一緒にいても楽しそうじゃない。どこか乾いた笑い声。些細な事だけど、その変化がわからないはずがない。ずっと、お前を見てたから…。
『別れてくれませんか?』
他人行儀な敬語。それが俺を余計に悲しくさせる。すぐ電話をかけるが、出てくれない。どうして…。
『電話はしたくないの。だからメールで…』
もうどうすればいいかわからない。
どうすればいい?
どうすれば…。
『こんな最低な女早く忘れてください』
一方的に送られてくるメール。最低?何言ってるんだ?お前ほどいい女はいないのに…。
『さよなら』
俺の思考回路は完全に麻痺する。携帯を握る手が震える。結局俺が返信したのは…。
『わかった。今までありがとう』
俺は自分の感情を封じ込めた。お前がそれを望むなら…。
別れる事がお前のためになるのなら…。
全てはお前のため。
お前が幸せになれるなら俺なんかどうでもいい。
そう思える程好きなんだ。大好きだから、全て受け入れたい。ああ、俺はなんて不器用なんだろう。
もう俺の隣にはいてくれないんだね。明日からはお前がいない生活…。
周りに冷やかされて怒ったり、恥ずかしいからか早足で歩いたり、手を握ると顔を真っ赤にしたり。全てが愛しかった。それも明日からは無いんだね。
俺は一人ぼっち…。
???
気付けば涙が出ていた。拭っても、拭ってもでてくる。その度にお前の笑顔が俺の頭に浮かぶ。
限界だった。何かが切れたようだった。不覚にも涙を流してしまった。だが不思議と「情けない」とは思わなかった。
こんなにも自分は彼女が好きなんだな、と誇りに思った。でもそれも今日、この瞬間から終わり。
さよなら。俺が初めて、心から愛した人。