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彼のキモチ
【青春 恋愛小説】

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彼のキモチ-1

あたしには特技がある。人の気持ちが分かってしまう。

目が合うと、「彼は今ものすごく疲れてて休みたいと思ってる」とか「彼女は彼のことが好き」とかが分かる。

便利だけど、たまに「彼はあたしのことが嫌い」なんてことも、目が合えば分かってしまう。彼の心の声が聞こえてくる。

悲しい特技だと、自分でも思うのだがあたしにはどうにもできなかった。

そんな特技を持つあたしの名前は椎名 葵(しいな あおい)です。よろしく。



朝早くから、日直の仕事を頼まれていたあたしは、山積みのノートとプリントを抱えて教室のドアをあけようとした。

―ドンッ

「わぁ!ごめんなさい!!」

いきなりドアが開いて、あたしは床にしりもちを付いた。誰かとぶつかったようだ。

「ごめっ、大丈夫?って大丈夫じゃないか。」

そこに立っていたのはクラスで一番目立つ佐倉 夕夜(さくら ゆうや)が居た。
夕夜くんは背が高くてイケメン。サッカー部もやってて、ものすごい人懐っこい性格。誰にでも平等に接する彼はクラス、いや学年で一番モテる人だった。

あたしはクラスでも地味なほうなので、あまり話したことはない。でも彼はあまり話したことの無い相手でも平等だ。

「だ、大丈夫です!」

みんなが彼のことを好きでも、あたしはどうにも好きになれなかった。

あたしにとって彼はなんか違う。

彼と目が合っても、彼の気持ちが分からないのだ。今まで誰の気持ちでも見えてきたから、逆に怖い。

「散らばっちゃったね。ゴメン!日直の仕事、一人で大変でしょ、この量は。手伝うよ。」

優しい。でも何を考えてるか分からない。

「ありがとう。」

あたしは少しだけ彼が怖くなくなって、笑顔になれた。

「オレ、椎名さんが笑ってんの初めて見たっ!」

「え?」

「カワイイね!」

その時あたしの顔が一気に赤くなった。鏡なんて見なくても分かる。

この人、絶対天然だ。あたしもよく言われるけど彼はあたし以上の天然。あたしはそのままうつむいていた。

「よし!拾いおわった!」
彼は何もなかったかのように散らばったものを拾い、あたしの顔の赤さにも気付かなかったようだ。

助かった。と、心のなかで思った。

「どうもありがとう。助かった!」

「どういたしまして。」

そういうと、彼は教室にいた友達の所に帰っていった。

彼が居るグループは派手で目立つ。ちゃらちゃらした女の子とか、軽そうな男の子達。

その時彼女達のグループから声が聞こえてきた。


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