彼のキモチ-2
「夕夜ァ、今度デーとしよぉ!」
グループの中のちゃらちゃらした女の子が大きな声で言う。
「オレら付き合ってないじゃん。」
「えー、いーじゃん、いーじゃん!行こうよ!」
何となく伝わってきた。夕夜くんは嫌そうだった。その夕夜くんの顔が気になって仕方がなかった。そして、彼を無理矢理誘っていた女の子がやけに嫌な子に思えた。
「ダメだよ!夕夜はあたしとデート!」
他の女の子が言う。
「だからオレには彼女居ないんですけどー?」
−放課後
日直の仕事で一人、教室に残っていた。
「あれ、椎名さん一人?」
「うん。夕夜くんは?彼女とデート?」
「だからー、オレ彼女居ないってー!」
「なら夕夜くん、さっきのことだけど嫌なら嫌って言ったほうが良いよ」
なんだろう。こんなこと夕夜くんに言うことじゃないのに。
「でも、夕夜くんがさっきの子たちが好きなら話は別なんだけど。」
あたし、やきもちを焼いてるんだ。あたし、夕夜くんのこと好きだったんだ。
「なにそれ。」
その時気が付いた。言ってからじゃ遅かった。夕夜くんは怒っていた。今更、夕夜くんのことが好きなんて気付かなきゃよかった。
あたしはとっさにその場から逃げようとした。が、夕夜くんに腕をつかまれた。
「ねぇ、なんで逃げるの!?」
「だって、他の人は分かるのに、夕夜くんの気持ちが分からないんだもん!」
「どう言うこと?」
そう聞かれて、あたしはすべてを話した。そして、夕夜くんは言った。
「オレの気持ち、教えてあげようか?」
あたしは涙目でうなずいた。嫌われただろう、とあたしは思った。その時・・・
―ぐいっ
あたしは夕夜くんに腕をひっぱられ、気が付くと夕夜くんの腕で強く抱き締められていた。
「オレは、前から葵のことが好きだった」
「へ?」
「優しくて、天然で、オレのこと分かってくれてる葵が好きです」
「・・・」
「・・・なんか言ってよ」
「あたしも・・・あたしも好きです」
「やった!」
その時彼はとても嬉しそうに笑った。
追記
あたし達は付き合うことになった。
そのあとよく考えたんだけど、あたしの特技は「好きな人」には通用しないみたいです!
☆終わり☆