夢現-1
酷く悲しい夢を見て、あたしは体を起こした。
今が何時だか分からない。起きるには早いように思えるし、再び眠るには遅いようにも感じる。
隣では、彼が寝息を立てていた。よほど疲れていたのだろう。起きる様子もない。
時間を確かめようとして、携帯は……彼の向こう側にあった。取りに行くにはベッドから出る必要があるだろう。
この温もりと、比べたら……。
時間は、気にしないことにした。そしてあたしは横になって、毛布を被る。もう一度寝てしまっても構わない。確か予定はないはすだ。
彼に近付いて、そのまま寄り添う。
本当は抱きしめてほしいけれど、寝入っている今は無理だろう。
だから、今は。
その手を握って、目を閉じる。
どうかまだ、この幻が続くように。