ふたり【それから―T】-3
「あかね……これが……最後……」
「……うん、うん。わかってる」
俺の頬を温かいものが流れた。
俺は最後に、あかねを抱き締める腕に想いを籠める。
そしてゆっくりと、あかねの体を離した。
「ねぇ。これからお兄ちゃんのこと『ユキ』って呼んでいい?」
あかねは涙でボロボロの顔で笑顔を作ってみせた。
「……うん、いいよ」
えへへ、とあかねは笑う。
「いつでもあかねの所に来ていいからね。」
冗談っぽく、あかねは笑う。
俺も、それにつられて笑った。
「あかねまだ眠いから、ここでちょっと寝てくね。」
「そっか。じゃあ俺、行くね。」
「うん。」
俺は「じゃあ」と言ってドアを閉め、階段を下りた。
胸の痛みは、消えていた。
「さよなら……お兄ちゃん……」
独りになった部屋であかねは、枕に顔を伏せて泣いた。
【それから】
続く