ふたり【それから―T】-2
「あかね。……どうした?」
「お兄ちゃん……」
こちらに振り返ったあかねの目から、涙がこぼれ落ちた。
「あかねのこと……嫌いにならないで……」
今にも折れてしまいそうなか細い声。
「何言って──。………聞いてたのか……?」
あかねは頷き、顔を下げたまま言った。
「わかってた。……いつか、こんな日が来るんじゃないかって思ってた。」
「……あかね……ごめん」
「なんで謝るの……?謝るのはあかねの方だよ」
あかねは涙で濡れた顔を上げる。
「お兄ちゃん、エリカのことが好きだって知ってたのに……あかねは……」
あかねの顔がくしゃっと崩れる。
「ごめんなさい……。あかね、ホントに嫌な子だね……」
「そんなこと……」
「でも、お兄ちゃん……あかねのこと、嫌いにならないで……?」
あかねはグスッと何度も鼻を鳴らす。
「……お願い。世界で二番目でいいから……あかねのこと、嫌いにならないで……」
そう言うとあかねは顔を掌で覆い、ついに声を上げて泣き出した。
「お願い……お願い……」
あかねは何度もそう呟く。
堪えきれず俺は、あかねの肩に手を当てた。
「バカだな……、俺があかねのこと嫌いになるわけないだろ」
俺は、あかねをそっと抱き寄せた。
「お兄ちゃぁん……」
あかねは、声を一層大きく上げて泣いた。
しばらくの間そうしていると、目の奥から熱いものがこみ上げてくるのを感じた。
「ありがとう……。お兄ちゃん。」
あかねは俺の胸に顔を埋(うず)めたまま言う。
俺は、あかねに告げなければならない。
重い……重い一言を